人物事典 / や行
山上憶良
やまのうえのおくら
660–733?
人物について
遣唐使の一員として唐に渡り、儒教や仏教の思想を学んだ。のち伯耆守・筑前守となり、筑前では大宰帥の大伴旅人と親しく交わった。子どもへの愛情、貧しさ、老いや病など、人生と社会の問題を正面から詠んだ歌人。
古典ライブラリーで読める歌:『万葉集』60首『新古今和歌集』1首
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『万葉集』の山上憶良
60首万葉集・63番いざ子どもいざ子ども はやく日本へ 大伴の 御津の濱松 待ち戀ひぬらむ原文・訳・解説を読む 万葉集・145番鳥翔なす鳥翔なす 在り通ひつつ 見らめども 人こそ知らね 松は知るらむ原文・訳・解説を読む 万葉集・337番憶良らは憶良らは 今は罷らむ 子哭くらむ 其の彼の母も 吾を待つらむぞ原文・訳・解説を読む 万葉集・794〜799番大王の 遠の朝廷と大王の遠の朝廷と しらぬひ筑紫の國に 泣く子なす慕ひ來まして 息だにも未だ休めず 年月もいまだあらねば 心ゆも思はぬ間に うち靡き臥しぬれ 言はむ術爲む術知らに 石木をも問ひ放け知らず 家ならば形はあらむを 恨めしき妹の命の 吾をばも如何にせよとか 鳰鳥の二人並び居 語らひし心背きて家離り坐す 家に行きて 如何にか吾がせむ 枕づく 嬬屋不樂く 思ほゆべしも 愛しきよし 斯くのみからに 慕ひ來し 妹が心の 術もすべなさ 悔しかも 斯く知らませば あをによし 國內ことごと 見せましものを 妹が見し 楝の花は 散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干なくに 大野山 霧立ちわたる 我が嘆く 息嘯の風に 霧立ちわたる原文・訳・解説を読む 万葉集・800〜801番父母を 見れば尊し父母を見れば尊し 妻子見ればめぐし愛し 世の中は斯くぞ道理 黐鳥の拘泥しもよ 行方知らねば穿沓を 脫ぎ棄る如く踏み脫ぎて 行くちふ人は石木より 成りでし人か汝が名告らさね 天へ行かば汝がまにまに 地ならば大王います この照らす日月の下は 天雲の向伏す極 谷蟆のさ渡る極 聞し食す國のまほらぞ 彼に此に欲しきまにまに然にはあらじか ひさかたの 天道は遠し なほなほに 家に歸りて 業を爲まさに原文・訳・解説を読む 万葉集・802〜803番瓜食めば瓜食めば子等思ほゆ 栗食めば況してしぬばゆ 何處より來りしものぞ 眼交にもとな懸りて安寢し爲さぬ 銀も 金も玉も 何せむに まされる寶 子に如かめやも原文・訳・解説を読む 万葉集・804〜805番世間の 術なきものは世間の術なきものは 年月は流るる如し 取りつづき追ひ來るものは 百種に責め依り來る 少女等が少女さびすと 唐玉を手本に纏かし 同輩兒と手携はりて 遊びけむ時の盛を 止みかね過し遣りつれ 蜷の腸か黑き髮に 何時の間か霜の降りけむ 紅の面の上に 何處ゆか皺搔き垂りし 丈夫の壯士さびすと 劒太刀腰に取り佩き 獵弓を手握り持ちて 赤駒に倭文鞍打置き 匍ひ乘りて遊び歩きし 世間や常にありける 少女等がさなす板戸を 押し開きい辿りよりて 眞玉手の玉手さし交へ さ寢し夜の幾許もあらねば 手束杖腰に束ねて 彼行けば人に厭はえ 此行けば人に惡まえ 凡しをば斯くのみならし たまきはる命惜しけどせむ術も無し 常磐なす 斯くしもがもと 思へども 世の事なれば 留みかねつも原文・訳・解説を読む 万葉集・813〜814番懸けまくは あやに畏し懸けまくはあやに畏し 帶比賣神の命 韓國を向け平らげて 御心を鎭め給ふと い取らして齋ひ給ひし 眞珠なす二つの石を 世の人に示し給ひて 萬代に言ひ繼ぐがねと 海の底奧つ深江の 海上の子負の原に み手づから置かし給ひて 神隨神さび坐す 奇魂今の現に尊きろかも 天地の 共に久しく 言ひ繼げと 此の奇魂 しかしけらしも原文・訳・解説を読む 万葉集・868〜870番松浦縣 佐用姫の子が松浦縣 佐用姫の子が 領巾振りし 山の名のみや 聞きつつ居らむ 足姫 神の命の 魚釣らすと 御立たしせりし 石を誰見き 百日しも 行かぬ松浦路 今日行きて 明日は來なむを 何か障れる原文・訳・解説を読む 万葉集・876〜879番天飛ぶや 鳥にもがもや天飛ぶや 鳥にもがもや 京まで 送り申して 飛び歸るもの 人皆の うらぶれ居るに 立田山 御馬近づかば 忘らしなむか 言ひつつも 後こそ知らめ とのしくも 不樂けめやも 君坐さずして 萬代に 坐し給ひて 天の下 まをし給はね 朝廷去らずて原文・訳・解説を読む 万葉集・880〜882番天ざかる 鄙に五年天ざかる 鄙に五年 住まひつつ 京の風俗 忘らえにけり 斯くのみや 息衝き居らむ あらたまの 來經往く年の 限知らずて 吾が主の 御靈賜ひて 春さらば 奈良の京に 召上げ給はね原文・訳・解説を読む 万葉集・886〜891番うち日さす 宮へ上るとうち日さす宮へ上ると 垂乳爲や母が手離れ 常知らぬ國の奧處を 百重山越えて過ぎ行き 何時しかも京師を見むと 思ひつつ語らひ居れど 己が身しいたはしければ 玉桙の道の隈囘に 草手折り柴取り敷きて とけじものうち臥伏して 思ひつつ歎き臥せらく 國に在らば父とり見まし 家に在らば母とり見まし 世間は斯くのみならし 狗じもの道に臥してや命過ぎなむ 垂乳爲の 母が目見ずて 欝く 何方向きてか 吾が別るらむ 常知らぬ 道の長路を くれぐれと 如何にか行かむ 糧米は無しに 家に在りて 母がとり見ば 慰むる 心はあらまし 死なば死ぬとも 出でて行きし 日を數へつつ 今日今日と 吾を待たすらむ 父母らはも 一世には 二遍見えぬ 父母を 置きてや長く 吾が別れなむ原文・訳・解説を読む 万葉集・892〜893番風雜り 雨降る夜の風雜り雨降る夜の 雨雜り雪降る夜は 術もなく寒くしあれば 堅鹽を取つづしろひ 糟湯酒うち啜ろひて 咳ぶかひ鼻ひしびしに しかとあらぬ鬚かき撫でて 吾を除きて人は在らじと 誇ろへど寒くしあれば 麻衾引き被り 布肩衣有りのことごと 服襲へども寒き夜すらを 我よりも貧しき人の 父母は飢ゑ寒からむ 妻子どもは乞ひて泣くらむ 此の時は如何にしつつか汝が世は渡る 天地は廣しといへど 吾が爲は狹くやなりぬる 日月は明しといへど 吾が爲は照りや給はぬ 人皆か吾のみや然る 邂逅に人とはあるを 人竝に吾も作るを 綿も無き布肩衣の 海松の如わわけさがれる 襤褸のみ肩に打ち懸け 伏廬の曲廬の内に 直土に藁解き敷きて 父母は枕の方に 妻子どもは足の方に 圍み居て憂ひ吟ひ 竈には火氣ふき立てず 甑には蜘蛛の巣懸きて 飯炊ぐ事も忘れて 奴延鳥の呻吟ひ居るに いとのきて短き物を 端截ると云へるが如く 楚取る里長が聲は 寢屋處まで來立ち呼ばひぬ 斯くばかり術無きものか世間の道 世間を 憂しと耻しと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば原文・訳・解説を読む 万葉集・894〜896番神代より 言傳て來らく神代より言ひ傳て來らく 虛みつ倭の國は 皇神の嚴しき國 言靈の幸はふ國と 語り繼ぎ言ひ繼がひけり 今の世の人も悉 目の前に見たり知りたり 人多に滿ちてはあれども 高光る日の朝廷 神ながら愛の盛に 天の下奏し給ひ 家つ子ら撰び給ひて 勅旨戴き持ちて 唐の遠き境に 遣はされ罷り坐せ 海原の邊にも奧にも 神留り領き坐す 諸の大御神等 船舳に導き申し 天地の大御神等 倭の大國靈 ひさかたの天の御虛ゆ 天翔り見渡し給ひ 事了り還らむ日は また更に大御神等 船舳に御手打ち懸けて 墨繩を延へたる如く あちかをし値嘉の岬より 大伴の御津の濱邊に 直泊に御船は泊てむ 恙無く幸く坐して早歸りませ 大伴の 御津の松原 かき掃きて 吾立ち待たむ 早歸りませ 難波津に 御船泊てぬと 聞え來ば 紐解き放けて 立走りせむ原文・訳・解説を読む 万葉集・897〜903番たまきはる 現の限はたまきはる現の限は 平らけく安くもあらむを 事も無く喪も無くあらむを 世間の厭けく辛けく いとのきて痛き瘡には 鹹鹽を灌ぐちふが如く ますますも重き馬荷に 表荷打つと云ふことの如 老いにてある我が身の上に 病をと加へてあれば 晝はも歎かひ暮し 夜はも息衝きあかし 年長く病みし渡れば 月累ね憂ひ吟ひ ことごとは死ななと思へど 五月蠅なす騷ぐ兒等を 棄てては死は知らず 見つつあれば心は燃えぬ 彼に此に思ひわづらひ哭のみし泣かゆ 慰むる 心はなしに 雲隱り 鳴き往く鳥の 哭のみし泣かゆ 術も無く 苦しくあれば 出で走り 去ななと思へど 兒等に障りぬ 富人の 家の子等の 著る身無み 腐し棄つらむ 絹綿らはも 麁妙の 布衣をだに 著せ難に 斯くや歎かむ 爲むすべを無み 水沫なす 脆き命も 栲繩の 千尋にもがと 願ひ暮しつ 倭文手纏 數にも在ぬ 身には在ど 千年にもがと 思ほゆるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・978番士やも 空しかるべき士やも 空しかるべき 萬代に 語り續ぐべき 名は立てずして原文・訳・解説を読む 万葉集・1518〜1519番天漢 相向き立ちて天漢 相向き立ちて 吾が戀ひし 君來ますなり 紐解き設けな ひさかたの 天漢瀨に 船泛けて 今夜か君が 我許來まさむ原文・訳・解説を読む 万葉集・1520〜1522番牽牛は 織女と牽牛は織女と 天地の別れし時ゆ いなうしろ河に向き立ち 思ふそら安けなくに 嘆くそら安けなくに 青浪に望は絕えぬ 白雲に淚は盡きぬ 斯くのみや氣衝き居らむ 斯くのみや戀ひつつあらむ さ丹塗の小船もがも 玉纏の眞かいもがも 朝なぎにい搔き渡り 夕潮にい榜ぎ渡り ひさかたの天の河原に 天飛ぶや領巾片敷き 眞玉手の玉手さし交へ あまた宿も寐てしかも秋にあらずとも 風雲は 二つの岸に 通へども 吾が遠嬬の 言ぞ通はぬ 礫にも 投げ越しつべき 天漢 隔てればかも あまた術無き原文・訳・解説を読む 万葉集・1523〜1529番秋風の 吹きにし日より秋風の 吹きにし日より いつしかと 吾が待ち戀ひし 君ぞ來ませる 天漢 いと河浪は 立たねども 伺候ひ難し 近きこの瀨を 袖振らば 見もかはしつべく 近けども 渡るすべ無し 秋にしあらねば 玉かぎる 髣髴に見えて 別れなば もとなや戀ひむ 逢ふ時までは 牽牛の 嬬迎へ船 榜ぎ出らし 天の河原に 霧の立てるは 霞立つ 天の河原に 君待つと いゆきかへるに 裳の裾ぬれぬ 天の河 浮津の浪音 騷ぐなり 吾が待つ君し 舟出すらしも原文・訳・解説を読む 万葉集・1537〜1538番秋の野に 咲きたる花を秋の野に 咲きたる花を 指折り かき數ふれば 七種の花 萩が花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝貌の花原文・訳・解説を読む