古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1537〜1538番

秋の野に 咲きたる花を

山上憶良(やまのうえのおくら)

秋の野に咲いている花を指折り数えると、七種類の花がある。萩の花、尾花、葛の花、撫子の花、女郎花、また藤袴、朝顔の花。秋の七草を詠んだ山上憶良の歌二首。

秋の野に萩・尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・朝顔が咲き、男が指を折って数えている

題詞山上臣憶良、秋の野の花を詠める歌二首

  1. 1秋あき秋あきあきののの野ぬ野ぬぬににに秋野爾1537 其一
  2. 2咲さ咲ささきききたるたるたる花はな花はなはなををを咲有花乎
  3. 3指および指およびおよび折を折をおりりり指折
  4. 4かきかきかき數かぞ數かぞかぞふれふれうればばば可伎數者
  5. 5七なな七なななな種くさ種くさくさののの花はな花はなはな七種花
  6. 6萩はぎ萩はぎはぎががが花はな花はなはな芽之花1538 其二
  7. 7尾を尾をお花ばな花ばなばな葛くず葛くずくず花ばな花ばなばな乎花葛花
  8. 8なでしこなでしこなでしこののの花はな花はなはな瞿麥之花
  9. 9女郎花をみなへし女郎花をみなへしおみなえし姫部志
  10. 10またまたまた藤ふぢ藤ふぢふじ袴ばかま袴ばかまばかま又藤袴
  11. 11朝あさ朝あさあさ貌がほ貌がほがおののの花はな花はなはな朝貌之花

引用の仕方

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現代語訳

〔1537〕秋の野に咲いている花を、指を折って数えてみると、七種類の花がある。

〔1538〕萩の花、尾花、葛の花、撫子の花、女郎花、それに藤袴、朝顔の花。

意訳

秋の野に咲く代表的な七つの花を、指折り数えて並べた歌である。1538番は旋頭歌の形で花の名を列挙しており、のちに「秋の七草」と呼ばれるもののもとになった。朝顔は今の朝顔ではなく、桔梗とする説が有力である。

語釈・文法注

文法・本文

指折り
「およびをり」。指を折って。

和歌

作者
山上憶良(660?–733?)
遣唐使として唐に渡り、のちに筑前守となった。人生や社会を見つめた歌、七夕の歌などで知られる。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1537〜1538番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
山上憶良が秋の野の花を詠んだ短歌と旋頭歌。

修辞

列挙
1538番で七つの花の名を並べる。

解説

春の七草が食用であるのに対し、秋の七草は観賞する花である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、319頁(コマ163)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、359頁(コマ185)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日