古典ライブラリー

古文書を読もう · 02

簡単な古文書を読む――百人一首を読もう

よく知っている歌なら、くずし字でも読めます。江戸時代の絵本に書かれた百人一首を、一行ずつ確かめながら読んでみましょう。

教材は、浮世絵師・勝川春章が歌人の姿を描いた『錦百人一首あつま織』(安永4年・1775年刊)です。歌は筆で書かれた文字をそのまま版木に彫って刷ったもので、江戸時代の人が実際に読んでいた文字の形をしています。百人一首は答えになる歌が分かっているので、くずし字を読む最初の練習にぴったりです。

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読む前に

読み方のコツ

  1. 右の行から左へ、上から下へ。作者名は歌の右にあれば先に、左にあれば最後に読みます。
  2. 改行は句の切れ目と一致しない。行の長さをわざと変えて、紙面に散らすように書きます(散らし書き)。「かな/しき」のように、ことばの途中でも行が変わります。
  3. 濁点はほとんど打たない。「かく山」は「かぐ山」、「みれは」は「みれば」。読むときに補います。
  4. くり返しの記号に注意。「ゝ」「ヽ」は直前の一字を、縦に長くのびる「〳〵」(くの字点)は二字以上をくり返します。
  5. 漢字・仮名の使い方が今と違う。「足曳(あしびき)」「天原(あまのはら)」のような当て字や、ひらがなの中に交じるカタカナ(ハ・レ)が出てきます。
  6. 今とは違う形のひらがながある。変体仮名(江戸仮名)です。変体仮名対応表で字源の漢字と見比べると、読める字が増えます。

各歌の「答えを隠す」を押すと翻字がぼやけます。画像を見て読んでから、行を押して答えを確かめましょう。「縦書き」にすると、画像と同じ向きで見比べられます。点線のことばを押すと、読み解きのヒントが出ます。字母(変体仮名の元になった漢字)を確かめた歌では、「変体仮名」を押すと字母が青字で表示されます。

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百人一首 第1首

天智天皇「秋の田の」

『錦百人一首あつま織』の天智天皇の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ11
  1. 1天智天皇てんじてんのう天智天皇てんじてんのうてんじてんのう作者
  2. 2秋あき秋あきあき田た田たたか可かり里りほ本おのののいいいほ保お
  3. 3苫とま苫とまとまあらあらあらみ見みわわわが可が
  4. 4ここころ路ろも毛もは者は露つゆ露つゆつゆににに
  5. 5ぬぬぬれれれつ津つ

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

乃(の)
「秋」の下と、2行目の頭の「の」は、漢字の「乃」をくずした形です。今のひらがな「の」も「乃」から生まれました。
能(の)
「田」の下の「の」は、漢字の「能」をくずした形。「れ」に似ていますが、同じ「の」を字源の違う形で書き分けています。
越(を)
「苫を」の「を」は、漢字の「越」をくずした形です。
ころも手
「衣手(ころもで)」を、仮名と漢字を交ぜて書いています。濁点は打たれていません。
つゝ
「ゝ」は、直前の仮名をくり返す踊り字。「つゝ」で「つつ」と読みます。

歌の通行本文

秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつゝ

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百人一首 第2首

持統天皇「春すぎて」

『錦百人一首あつま織』の持統天皇の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ12
  1. 1持統天皇じとうてんのう持統天皇じとうてんのうじとうてんのう作者
  2. 2春はる春はるはるてててなつなつなつ
  3. 3来き来ききに尓にけ介けらららししし
  4. 4白妙しろたへ白妙しろたへしろたえののの
  5. 5衣ころも衣ころもころもほ本ほす春す
  6. 6あああま末まののの山やま山やまやま

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

過て
「すぎて」と読みます。送り仮名の「ぎ」を書かないのは、古い書物ではよくあることです。
てふ
「といふ」が縮まった形で、「ちょう」と読みます。
かく山
濁点を打たずに書くので「かく」ですが、「かぐ(香具)山」と読みます。

歌の通行本文

春すぎて 夏来にけらし しろたへの 衣ほすてふ あまの香山

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百人一首 第3首

柿本人麻呂「あしびきの」

『錦百人一首あつま織』の柿本人麻呂の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ12
  1. 1ののの山鳥やまどり山鳥やまどりやまどりののの
  2. 2尾を尾をおの乃のしししだ多だりりり
  3. 3ののの
  4. 4
  5. 5よよよを越を
  6. 6ひ飛ひとりとりとり
  7. 7か可かもももんんん
  8. 8柿本人麻呂かきのもとのひとまろ柿本人麻呂かきのもとのひとまろかきのもとのひとまろ作者

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

足曳
枕詞「あしびき」に漢字を当てた書き方(当て字)。意味より音を写した表記です。
お
「しだり尾」の「尾」は歴史的仮名遣いでは「を」ですが、ここでは「お」と書いています。江戸時代の書物では、仮名遣いが今の辞書どおりでないことがあります。
なか〳〵し
「なか」の下の縦に長くのびる線は、二字以上をくり返す踊り字「くの字点」(〳〵)です。「なか」をくり返し、濁点を補って「ながながし」と読みます。
ねん
「寝む(ねむ)」を「ねん」と書いています。発音に近い書き方です。

歌の通行本文

あしびきの 山鳥のをの しだりをの ながながしよを 一人かもねん

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百人一首 第4首

山部赤人「田子の浦に」

『錦百人一首あつま織』の山部赤人の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ13
  1. 1山部赤人やまべのあかひと山部赤人やまべのあかひとやまべのあかひと作者
  2. 2田子たご田子たごたごの能の浦うら浦うらうら
  3. 3に尓にうちうちうちいいい
  4. 4出で出ででてててみみみれ連れ
  5. 5
  6. 6白妙しろたへ白妙しろたへしろたえののの
  7. 7ふ布ふののの
  8. 8た多たかかかね年ね
  9. 9ににに
  10. 10雪ゆき雪ゆきゆき
  11. 11ははは
  12. 12ふ布ふりりり
  13. 13つ津つゝゝつ

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

ハ
カタカナの「ハ」が、ひらがなの文の中に交じっています。濁点を補って「みれば」と読みます。
ふし
濁点を打たないので「ふし」ですが、「ふじ(富士)」のことです。

歌の通行本文

田子浦に うちいでてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪はふりつゝ

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百人一首 第5首

猿丸大夫「奥山に」

『錦百人一首あつま織』の猿丸大夫の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ13
  1. 1お於おくくく山やま山やまやまに尓に紅葉もみぢ紅葉もみぢもみじふふふみ三み
  2. 2わ王わけけけなくなくなくし志しか可かの乃の
  3. 3こここきくきくきく時とき時ときときそ曽ぞ
  4. 4秋あき秋あきあきは者はか可か
  5. 5しきしきしき
  6. 6猿丸大夫さるまるだゆう猿丸大夫さるまるだゆうさるまるだゆう作者

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

こえ
「声」は歴史的仮名遣いでは「こゑ」ですが、ここでは「こえ」と書いています。
かな/しき
「かなしき」が二行に分かれています。散らし書きでは、ことばの途中でも改行します。

歌の通行本文

奥山に もみぢふみわけ なく鹿の 声きくときぞ 秋はかなしき

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百人一首 第6首

中納言家持(大伴家持)「かささぎの」

『錦百人一首あつま織』の中納言家持(大伴家持)の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ14
  1. 1中納言家持ちゅうなごんやかもち中納言家持ちゅうなごんやかもちちゅうなごんやかもち作者
  2. 2のののわたわたわた
  3. 3せるせるせる橋はし橋はしはしにににおくおくおく
  4. 4霜しも霜しもしもののの白しろ白しろしろきききををを
  5. 5みみみ夜よ夜よよそそぞ
  6. 6にににけるけるける

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

かさゝき
「ゝ」で「さ」をくり返し、濁点を補って「かささぎ」と読みます。
レハ
カタカナの「レ」「ハ」。「みれば」と読みます。
更にける
「更けにける」の送り仮名「け」を書かない形です。

歌の通行本文

かさゝぎの わたせる橋に おく霜の しろきを見れば 夜ぞふけにける

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07

百人一首 第7首

安倍仲麿「天の原」

『錦百人一首あつま織』の安倍仲麿の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ14
  1. 1ふりふりふり
  2. 2さけさけさけみれみれみれははば
  3. 3春日かすが春日かすがかすがなるなるなる
  4. 4みかさみかさみかさののの山やま山やまやま
  5. 5ににに
  6. 6ししし
  7. 7月つき月つきつき
  8. 8かもかもかも
  9. 9安倍仲麿あべのなかまろ安倍仲麿あべのなかまろあべのなかまろ作者

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

天原
「の」を書かずに「天原」とし、「あまのはら」と読ませています。
いてし
濁点を補って「いでし(出でし)」。「に/いて/し」と一字ずつ行を変えて書いています。

歌の通行本文

あまの原 ふりさけみれば 春日なる みかさの山に 出し月かも

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百人一首 第8首

喜撰法師「わが庵は」

『錦百人一首あつま織』の喜撰法師の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ15
  1. 1喜撰法師きせんほうし喜撰法師きせんほうしきせんほうし作者
  2. 2いほいほいおはははみやこみやこみやこののの
  3. 3たつみたつみたつみ
  4. 4しかしかしかそそぞ
  5. 5すむすむすむ
  6. 6よよよをををやまやまやまととと
  7. 7人ひと人ひとひとははは
  8. 8いふいふいうなりなりなり

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

我
一字で「わが」と読みます。
うぢやま
地名の「宇治(うぢ)」と「憂し」を掛けた表現です。

歌の通行本文

我いほは 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり

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百人一首 第9首

小野小町「花の色は」

『錦百人一首あつま織』の小野小町の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ15
  1. 1小野小町おののこまち小野小町おののこまちおののこまち作者
  2. 2花はな花はなはなののの色いろ色いろいろうつりうつりうつりにににけりけりけりななな
  3. 3いたいたいたつらつらづらににに
  4. 4わかわかわが身み身みみよよよにににふるふるふるせせせ
  5. 5しましましまににに

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

ハ
カタカナの「ハ」。ここは助詞の「は」です。
なかめせしまに
濁点を補って「ながめせしまに」。「ながめ」は「長雨」と「眺め(物思い)」の掛詞です。

歌の通行本文

花の色は うつりにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせしまに

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百人一首 第10首

蝉丸「これやこの」

『錦百人一首あつま織』の蝉丸の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ16
  1. 1蝉丸せみまる蝉丸せみまるせみまる作者
  2. 2これこれこれやややこここ
  3. 3のののゆくゆくゆく
  4. 4ももも帰かへ帰かへかえるるるももも
  5. 5わかれわかれわかれ
  6. 6てててははは
  7. 7しらしらしら
  8. 8ぬぬぬももも
  9. 9ののの
  10. 10関せき関せきせき

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

あふさか
歴史的仮名遣いで「あふさか(逢坂)」。現代仮名遣いでは「おうさか」と書きます。

歌の通行本文

これやこの ゆくもかへるも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関

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百人一首 第11首

参議篁(小野篁)「わたの原」

『錦百人一首あつま織』の参議篁(小野篁)の丁。歌と作者名がくずし字で書かれている
画像を押すと拡大します。国立国会図書館デジタルコレクション コマ16
  1. 1わたわたわたのののはらはらはら
  2. 2
  3. 3かけかけかけててて
  4. 4ぬぬぬととと
  5. 5人ひと人ひとひとにににはははつつつ
  6. 6けけけよよよ
  7. 7あまあまあまののの
  8. 8つりつりつり舟ぶね舟ぶねぶね
  9. 9参議篁さんぎたかむら参議篁さんぎたかむらさんぎたかむら作者

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

八十島
「やそしま」と読み、たくさんの島々のこと。
漕出
「こぎいで」と読みます。送り仮名を書かない形です。

歌の通行本文

わたの原 やそ島かけて こぎ出ぬと 人には告げよ あまのつり船

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出典

資料
勝川春章画『錦百人一首あつま織』 安永4年(1775)、江戸・雁金屋儀助刊。国立国会図書館所蔵(国立国会図書館デジタルコレクション、コマ11〜16)。保護期間満了(パブリックドメイン)。画像は歌の丁を切り出して縮小しました。
翻字
古典ライブラリー編集部。底本の改行どおりに写し、字体は通行の字体に改めた。
読み・注
古典ライブラリー編集部
更新日