人物事典 / た行
田辺福麻呂
たなべのさきまろ
生没年未詳
人物について
奈良時代の官人・歌人。橘諸兄に仕え、宮廷歌人として都の讃歌などを残した。巻第六の終わりの21首は『田辺福麻呂歌集』から採られている。
古典ライブラリーで読める歌:『万葉集』31首
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『万葉集』の田辺福麻呂
31首万葉集・1047〜1049番やすみしし 吾大王の 高敷かすやすみしし吾大王の 高敷かす大和の國は 皇祖の神の御代より 敷きませる國にしあれば 生れまさむ御子のつぎつぎ 天の下知ろしいませと 八百萬千年を兼ねて 定めけむ平城の京師は かぎろひの春にしなれば 春日山三笠の野邊に 櫻花木の晩隱り 貌鳥は間なく數鳴く 露霜の秋さり來れば 射駒山飛火が嵬に 萩の枝をしがらみ散らし さを鹿は妻呼び響む 山見れば山も見が欲し 里見れば里も住みよし もののふの八十伴の緒の うち延へて里竝みしけば 天地の依り會ひの限 萬代に榮え行かむと 思ひいりし大宮すらを 恃めりし奈良の京を 新世の事にしあれば 皇の引のまにまに 春花のうつろひ易り 群鳥の朝立ちゆけば さす竹の大宮人の 踏みならし通ひし道は 馬も行かず人も往かねば荒れにけるかも 立ち易り 古きみやこと なりぬれば 道の芝草 長く生ひにけり 馴着きにし 奈良の都の 荒れゆけば 出で立つごとに 嘆きし益る原文・訳・解説を読む 万葉集・1050〜1052番現つ神 わが皇の 天の下現つ神わが皇の 天の下八島の中に 國はしも多くあれども 里はしも多にあれども 山並の宜しき國と 川次の立ち合ふ鄕と 山城の鹿背山の際に 宮柱太敷き奉り 高知らす布當の宮は 河近み瀨の音ぞ淸き 山近み鳥が音響む 秋されば山もとどろに さを鹿は妻呼び響め 春されば岡邊も繁に 巖には花開き撓り あな何怜布當の原 いと貴と大宮どころ 諾しこそわが大王は 君の隨聞し給ひて さす竹の大宮此處と定めけらしも 三日の原 布當の野邊を 淸みこそ 大宮どころ 定めけらしも 山高く 川の瀨淸し 百世まで 神しみ行かむ 大宮どころ原文・訳・解説を読む 万葉集・1053〜1058番吾が皇 神の命の吾が皇神の命の 高知らす布當の宮は 百樹成す山は木高し 落ちたぎつ瀨の音も淸し 鶯の來鳴く春べは 巖には山下光り 錦なす花咲きををり さを鹿の妻呼ぶ秋は 天霧ふ時雨を疾み さ丹づらふ黃葉散りつつ 八千年にあれつかしつつ 天の下知ろしめさむと 百代にも易るべからぬ大宮處 泉川 ゆく瀨の水の 絕えばこそ 大宮どころ 遷ろひ往かめ 布當山 山並みれば 百代にも 易るべからぬ 大宮處 をとめ等が 績苧繫くとふ 鹿背の山 時し往ければ 京師となりぬ 鹿背の山 樹立をしげみ 朝去らず 來鳴きとよもす 鶯の聲 狛山に 鳴くほととぎす 泉河 渡を遠み ここに通はず原文・訳・解説を読む 万葉集・1059〜1061番三香の原 久邇の京師は三香の原久邇の京師は 山高み河の瀨淸み 住みよしと人は云へども 在りよしと吾は念へど 古りにし里にしあれば 國見れど人も通はず 里見れば家も荒れたり 愛しけやし斯くありけるか 御室つく鹿背山の際に 咲く花の色めづらしく 百鳥の聲なつかしく 在りが欲し住みよき里の荒るらく惜しも 三香の原 久邇の京は 荒れにけり 大宮人の 遷ろひぬれば 咲く花の 色はかはらず 百磯城の 大宮人ぞ 立ちかはりぬる原文・訳・解説を読む 万葉集・1062〜1064番やすみしし 吾が大王の 在り通ふやすみしし吾が大王の 在り通ふ難波の宮は 鯨魚取り海片附きて 玉拾ふ濱邊を近み 朝羽振る浪の音さわぎ 夕なぎに櫂の聲聞ゆ あかときの寐覺に聞けば 海若の潮干の共 浦渚には千鳥妻呼び 葭邊には鶴が音響む 視る人の語にすれば 聞く人の見まく欲りする 御食向ふ味原の宮は見れど飽かぬかも 在りがよふ 難波の宮は 海近み 漁童女等が 乘れる船見ゆ 潮干れば 葦邊に騷ぐ 白鶴の 妻呼ぶ聲は 宮もとどろに原文・訳・解説を読む 万葉集・1065〜1067番八千桙の 神の御世より八千桙の神の御世より 百船の泊つる泊と 八島國百船人の 定めてし敏馬の浦は 朝風に浦浪さわぎ 夕浪に玉藻は來寄る 白沙淸き濱邊は 往き還り見れども飽かず 諾しこそ見る人ごとに 語り繼ぎ偲びけらしき 百世歷て偲ばえゆかむ淸き白濱 まそかがみ 敏馬の浦は 百船の 過ぎて往くべき 濱ならなくに 濱淸み 浦うるはしみ 神代より 千船のとまる 大和田の濱原文・訳・解説を読む 万葉集・4032〜4035番奈呉の海に 船暫し借せ奈呉の海に 船暫し借せ 沖に出でて 波立ち來やと 見て歸り來む 波立てば 奈呉の浦廻に 寄る貝の 間無き戀にぞ 年は經にける 奈呉の海に 潮のはや干ば 求食しに 出でむと鶴は 今ぞ鳴くなる ほととぎす 厭ふ時なし 菖蒲草 蘰にきむ日 此ゆ鳴き渡れ原文・訳・解説を読む 万葉集・4036番如何にある 布勢の浦ぞも如何にある 布勢の浦ぞも 許多に 君が見せむと 我を留むる原文・訳・解説を読む 万葉集・4038〜4042番玉くしげ いつしか明けむ玉くしげ いつしか明けむ 布勢の海の 浦を行きつつ 玉藻拾はむ 音のみに 聞きて目に見ぬ 布勢の浦を 見ずは上らじ 年は經ぬとも 布勢の浦を 行きてし見ては 百磯城の 大宮人に 語り繼ぎてむ 梅の花 咲き散る園に われ行かむ 君が使を 片待ちがてら 藤浪の 咲き行く見れば ほととぎす 鳴くべき時に 近づきにけり原文・訳・解説を読む