古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1038〜1039番

ふるさとは 遠くもあらず

高丘河内(たかおかのかわち)

故郷は遠くもないのに、一重の山を越えるので、こんなに思い慕うのだ。あなたと二人でいれば、月が照らなくてもかまわない。恭仁京に移った高丘河内の歌二首。

山に囲まれた新しい都の里で、二人の男が月の出ない夜空の下で語り合っている

題詞高丘河內連の歌二首

  1. 1ふるさとふるさとふるさとははは故鄕者1038
  2. 2遠とほ遠とほとおくくくもももあらあらあらずずず遠毛不有
  3. 3一ひと一ひとひと重へ重へへ山やま山やまやま一重山
  4. 4越こ越ここゆるゆるゆるががが故から故からからににに越我可良爾
  5. 5念おも念おもおもひひいぞぞぞ吾わ吾わわががが爲せ爲せせししし念曾吾世思
  6. 6吾わが吾わがわが背せ背せせ子こ子ここととと吾背子與1039
  7. 7二ふた二ふたふた人り人りりししし居を居をおれれればばば二人之居者
  8. 8山やま山やまやま高たか高たかたかみみみ山高
  9. 9里さと里さとさとにににははは月つき月つきつきははは里爾者月波
  10. 10照て照ててらららずずずともともともよしよしよし不曜十方余思

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔1038〕故郷(奈良の都)は遠くもないのに、一重の山を越えているために、こんなにも思い慕ったことだ。

〔1039〕あなたと二人でいるので、山が高くて里には月が照らなくてもかまわない。

意訳

恭仁京は奈良から山ひとつ越えた所にある。1038番は、旧都は遠くないのに、山を隔てるだけで恋しく思われると歌う。1039番は、山が高くて月の出が遅い新都でも、親しい友と二人でいれば月がなくてもかまわないと、友との語らいを喜んでいる。

語釈・文法注

文法・本文

越ゆるが故に
越えるために。
照らずともよし
照らなくてもかまわない。

和歌

作者
高丘河内(生没年未詳)
奈良時代の官人・文人。百済系の渡来氏族の出身。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1038〜1039番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
恭仁京に移ったころ、高丘河内が詠んだ歌二首。

解説

奈良の都と恭仁京の間には、奈良山がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、249頁(コマ128)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、272頁(コマ142)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日