古典ライブラリー

万葉集 巻第六 985〜986番

天に坐す 月讀壯子

湯原王(ゆはらのおおきみ)

天にいらっしゃる月読壮子よ、幣を捧げるから、今夜の長さを五百夜分も続けておくれ。遠くない里の人が来るというので、ゆったりと月が照っている。湯原王の月の歌二首。

夜空に満月が輝き、縁側の貴公子が月に向かって幣を捧げている

題詞湯原王の月の歌二首

  1. 1天あめ天あめあめににに坐ま坐まますすす天爾座985
  2. 2月つく月つくつく讀よみ讀よみよみ壯をと壯をとおと子こ子ここ月讀壯子
  3. 3幣まひ幣まひまいははは爲せ爲せせむむむ幣者將爲
  4. 4今こ今ここ夜よひ夜よひよいののの長なが長ながながさささ今夜乃長者
  5. 5五い五いい百ほ百ほほ夜よ夜よよ繼つ繼つつぎぎぎこそこそこそ五百夜繼許增
  6. 6愛は愛ははしきしきしきやしやしやし愛也思986
  7. 7遠とほ遠とほとおからからからぬぬぬ里さと里さとさとののの不遠里乃
  8. 8君きみ君きみきみ來こ來ここむむむととと君來跡
  9. 9大おほ大おほおお能の能のの備び備びびにににかもかもかも大能備爾鴨
  10. 10月つき月つきつきののの照て照ててりりりたるたるたる月之照有

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔985〕天にいらっしゃる月読壮子よ、贈り物はしよう。今夜の長さを、五百夜分も続けておくれ。

〔986〕ああ、いとしい、遠くない里のあなたが来ようとするので、ゆったりと月が照っているのだろうか。

意訳

985番は、月の神である月読壮子に贈り物を約束して、恋人と過ごす今夜を五百夜分も長くしてほしいと願う。986番は、近くの里の恋人が通ってくるので、月がゆったりと明るく照らしているのだろうかと、月に感謝するような気持ちを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

月讀壯子
月を神格化した言い方。
大能備に
語義未詳。ゆったりと、の意とする説がある。

和歌

作者
湯原王(生没年未詳)
志貴皇子の子。父に似て、繊細で清らかな歌を残した。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・985〜986番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
湯原王の月の歌二首。

修辞

擬人法
985番で、月に呼びかけて願う。

解説

月の神に供え物をして夜を長くしてもらおうという発想がほほえましい。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、239頁(コマ123)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、261頁(コマ136)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日