古典ライブラリー

万葉集 巻第六 961番

湯の原に 鳴く蘆鶴は

大伴旅人(おおとものたびと)

湯の原で鳴く葦辺の鶴は、私のように妻を恋しく思うからか、時を定めず鳴いている。妻を亡くした大伴旅人が、温泉で鶴の声を聞いて詠んだ歌。

湯けむりの立つ温泉のほとりの葦原で、一羽の鶴が鳴いている。初老の貴人が湯に浸かりながら聞き入っている

題詞帥大伴卿、次田溫泉に宿りて、鶴の喧くを聞きて作れる歌一首

  1. 1湯ゆ湯ゆゆののの原はら原はらはらににに湯原爾
  2. 2鳴な鳴ななくくく蘆あし蘆あしあし鶴たづ鶴たづたずははは鳴蘆多頭者
  3. 3吾わ吾わわががが如ごと如ごとごとくくく如吾
  4. 4妹いも妹いもいもににに戀こ戀ここふれふれうれややや妹爾戀哉
  5. 5時とき時ときときわかわかわかずずず鳴な鳴ななくくく時不定鳴

引用の仕方

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現代語訳

湯の原に鳴く葦辺の鶴は、私のように妻を恋しく思うからか、時を定めず鳴いている。

意訳

大宰府に近い次田温泉(今の二日市温泉)に泊まった旅人は、鳴き続ける鶴の声を聞いて、あの鶴も自分と同じように妻を恋しがっているのだろうかと思う。亡き妻への思いを鶴に重ねた、しみじみとした歌である。

語釈・文法注

文法・本文

戀ふれや
已然形+「や」で疑問の条件。恋しく思うからか。

和歌

作者
大伴旅人(665–731)
大伴安麻呂の子で、家持の父。大宰帥として筑紫に赴任し、山上憶良らと筑紫歌壇を形づくった。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・961番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大宰帥の大伴旅人が、次田温泉に泊まって鶴の鳴く声を聞いて詠んだ歌。

解説

次田温泉は今の福岡県筑紫野市の二日市温泉。旅人は赴任してまもなく妻を亡くしている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、235頁(コマ121)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、256頁(コマ134)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日