古典ライブラリー

万葉集 巻第三 407番

春霞 春日の里の

大伴駿河麻呂(おおとものするがまろ)

春日の里に植えた水葱が、まだ苗だと言っていたその茎は、もう伸びて大きくなっただろうか。まだ幼いと言われていた坂上二嬢が、もう年ごろになったかと問いかける求婚の歌。

春霞のかかる春日の里の水田で、水葱の苗が青々と伸びている

題詞大伴宿禰駿河麻呂、同じき坂上家の二孃を娉ふ歌一首

  1. 1春はる春はるはる霞がすみ霞がすみがすみ春霞
  2. 2春日かすが春日かすがかすがののの里さと里さとさとののの春日里之
  3. 3殖うゑ殖うゑうえ子こ子ここ水な水なな葱ぎ葱ぎぎ殖子水葱
  4. 4苗なへ苗なへなえなりなりなりととといひいひいいししし苗有跡云師
  5. 5枝え枝ええはははさしさしさしにににけむけむけん柄者指爾家牟

引用の仕方

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現代語訳

(春霞)春日の里に植えた水葱が、まだ苗だと言っていた、その茎はもう伸びたことだろうか。

意訳

坂上郎女の二女(二嬢)は、まだ幼いからと縁談を断られていたらしい。駿河麻呂は、植えた水葱の苗にたとえて、まだ苗だと言っていたけれど、もう茎が伸びて大きくなったでしょうと、年ごろになった二嬢への求婚を申し入れている。

語釈・文法注

文法・本文

殖子水葱
「うゑこなぎ」は田に植えた水葱(ミズアオイ)。若菜として食べた。
枝はさしにけむ
「さす」は伸びる。茎が伸びたことだろうか。

和歌

作者
大伴駿河麻呂(?–776)
大伴御行の孫。陸奥按察使・鎮守将軍などを務めた。叔母の坂上郎女の娘、坂上二嬢を妻とした。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・407番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大伴駿河麻呂が、坂上家の二嬢に求婚した歌。

修辞

譬喩
水葱の苗の成長に、二嬢の成長をたとえる。

解説

401・402番に続く、駿河麻呂と坂上家との縁談にかかわる歌である。駿河麻呂はのちに二嬢を妻とした。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、115頁(コマ61)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、118頁(コマ65)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日