古典ライブラリー

万葉集 巻第三 401番

山守の

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

山の番人がいたとは知らずに、その山にしるしを結び立てて、結んだことで恥をかいてしまった。娘にはすでに決まった人がいたのに縁談を進めてしまった、と戯れた坂上郎女の歌。

親族の集まる宴の席で、年配の女性が扇を口もとにあて、若い男をからかうように笑っている

題詞大伴坂上郎女、親族と宴する日吟へる歌一首

  1. 1山やま山やまやま守もり守もりもりののの山守之
  2. 2ありありありけるけるける知し知ししらららににに有家留不知爾
  3. 3そのそのその山やま山やまやまににに其山爾
  4. 4標しめ標しめしめ結ゆ結ゆゆひひい立た立たたてててててて標結立而
  5. 5結ゆひ結ゆひゆいののの辱はぢ辱はぢはじしししつつつ結之辱爲都

引用の仕方

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現代語訳

山の番人がいたとは知らずに、その山にしるしを結び立てて、結んだことで恥をかいてしまった。

意訳

大伴氏の親族の宴で、坂上郎女が詠んだ歌である。山に山守(番人)がいたのを知らずにしるしを結んで恥をかいたと歌う。駿河麻呂を相手に、娘にはすでに決まった人がいるのを知らずに縁談をすすめてしまった、とからかったものと考えられる。

語釈・文法注

文法・本文

結の辱しつ
しるしを結んだことで恥をかいた。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。大伴家の家刀自として一族の祭祀を担い、万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・401番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女が、親族との宴の日に詠んだ歌。

修辞

譬喩
山に女性を、山守にその女性の決まった相手をたとえる。

解説

宴の座興の歌であり、次の402番で駿河麻呂がすぐに答えている。大伴氏の一族の間で、歌によって冗談を言い合う和やかな様子がうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、114頁(コマ61)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、117頁(コマ64)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日