古典ライブラリー

新古今和歌集 巻第五 秋歌下 518番

蛬

藤原良経(後京極摂政)(ふじわらのよしつね)

こおろぎが鳴く、霜の降りる寒い夜に、むしろの上に衣の片袖を敷いて、独りで寝るのだろうか。

作者
攝政太政大臣(藤原良経(後京極摂政))
  1. 1百首ひやくしゆ百首ひやくしゆひゃくしゅ歌うた歌うたうた奉たてまつ奉たてまつたてまつりしりしりし時とき時ときとき詞書
  2. 2蛬きりぎりす蛬きりぎりすきりぎりす初句
  3. 3なくやなくやなくや霜夜しもよ霜夜しもよしもよののの二句
  4. 4さむしろにさむしろにさむしろに三句
  5. 5衣ころも衣ころもころもかたしきかたしきかたしき四句
  6. 6獨ひと獨ひとひとりかもりかもりかも寐ね寐ねねむむむ結句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕百首歌を献上した時の歌。

こおろぎが鳴く、霜の降りる寒い夜に、むしろの上に衣の片袖を敷いて、独りで寝るのだろうか。

意訳

こおろぎの鳴き声が聞こえる、霜の降りる寒い夜。冷たいむしろの上に自分の衣の片袖だけを敷いて、独り寂しく寝ることになるのだろうか。

語釈・文法注

蛬
きりぎりす。今のこおろぎ。
さむしろ
むしろ。「寒し」を掛ける。
衣かたしき
自分の衣の片袖だけを敷いて独り寝をすること。

和歌

作者
藤原良経(後京極摂政)(ふじわらのよしつね) 1169–1206
九条兼実の子。摂政・太政大臣に至った。『新古今和歌集』の仮名序を書き、和歌所の寄人の筆頭として撰集を主導した。叔父の慈円や藤原定家ら御子左家の歌人を庇護し、清新で格調の高い歌を詠んだ。書にもすぐれ、後京極流の祖とされる。『新古今和歌集』に七十九首が入る。
出典
『新古今和歌集』巻第五・秋歌下・518番
歌体
短歌
状況
詞書「百首歌奉りし時」(百首歌を献上した時の歌)。

修辞

掛詞
「さむしろ」に「寒し」と「さ筵」を掛ける。
本歌取り
「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」(百人一首3番)、「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」(古今集)をふまえる。

解説

良経の代表作で、百人一首91番。二首の古歌を巧みに取りこみ、晩秋の独り寝の寂しさを深めている。

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出典

底本
『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、90頁(コマ55)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日