新古今和歌集 巻第三 夏歌 220番
うちしめり
しっとりと湿って、菖蒲が香っている。ほととぎすの鳴く五月の、雨の夕暮れに。
場面イラスト(準備中)
現代語訳
〔詞書〕五首歌を人々に詠ませました時、夏の歌として詠みました歌。
しっとりと湿って、菖蒲が香っている。ほととぎすの鳴く五月の、雨の夕暮れに。
意訳
五月雨の夕暮れ、あたりがしっとりと湿って、菖蒲の香りがひときわ強く漂う。そこへほととぎすの声が聞こえてくる。
語釈・文法注
- うちしめり
- しっとりと湿って。
- 菖蒲
- あやめ。端午の節句に軒に挿した。
和歌
- 作者
- 藤原良経(後京極摂政)(ふじわらのよしつね) 1169–1206
九条兼実の子。摂政・太政大臣に至った。『新古今和歌集』の仮名序を書き、和歌所の寄人の筆頭として撰集を主導した。叔父の慈円や藤原定家ら御子左家の歌人を庇護し、清新で格調の高い歌を詠んだ。書にもすぐれ、後京極流の祖とされる。『新古今和歌集』に七十九首が入る。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第三・夏歌・220番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「五首の歌人々によませ侍りける時、夏の歌とてよみ侍りける」(五首歌を人々に詠ませました時、夏の歌として詠みました歌)。
修辞
- 本歌取り
- 「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」(古今集)をふまえる。
- 体言止め
- 体言止め。
解説
良経の代表作の一つ。古今集の恋の歌の序詞を、湿った空気と香りに満ちた初夏の夕暮れの景に生まれ変わらせている。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、39頁(コマ29)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日