新古今和歌集 巻第二 春歌下 99番
櫻さく
桜の咲く遠くの山にいる山鳥の、長く垂れた尾のように長い長い春の一日も、見飽きることのない花の色であることよ。
場面イラスト(準備中)
現代語訳
〔詞書〕釈阿(藤原俊成)の九十の賀を和歌所で催しました折に、屏風の、山に桜が咲いている所の絵に添えた歌。
桜の咲く遠くの山にいる山鳥の、長く垂れた尾のように長い長い春の一日も、見飽きることのない花の色であることよ。
意訳
遠い山に咲き誇る桜は、山鳥の長い尾のように長い春の日を一日中眺めていても、少しも見飽きることがない。師である俊成の長寿を祝う席で、桜の美しさと、長い時の流れをめでたく詠む。
語釈・文法注
- 釋阿
- 藤原俊成の出家後の名。
- 九十の賀
- 九十歳の長寿の祝い。建仁三年(1203)に和歌所で催された。
- しだり尾
- 長く垂れ下がった尾。
- あかぬ
- 見飽きない。
和歌
- 作者
- 後鳥羽院(ごとばいん) 1180–1239
第八十二代天皇。譲位後に院政を行い、和歌所を置いて『新古今和歌集』の撰集を命じ、自らも撰歌と切継に深く関わった。承久の乱(1221)に敗れて隠岐に配流され、配所でも集の精選(隠岐本)を続けた。『新古今和歌集』では「太上天皇」と記され、三十三首が入る。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第二・春歌下・99番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「釋阿和歌所にて九十の賀し侍りし折、屏風に山に櫻咲きたる所を」(釈阿(藤原俊成)の九十の賀を和歌所で催しました折に、屏風の、山に桜が咲いている所の絵に添えた歌)。
修辞
- 序詞
- 「遠山鳥のしだり尾の」が「ながながし」を導く。
- 本歌取り
- 「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」(柿本人麻呂、百人一首3番)をふまえる。
解説
後鳥羽院が主催した俊成の九十賀の屏風歌。人麻呂の歌の「長い夜」を「長い春の日」に詠みかえ、祝いの席にふさわしい明るい歌にしている。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、18頁(コマ19)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日