古典ライブラリー

新古今和歌集 巻第一 春歌上 78番

やかずとも

壬生忠見(みぶのただみ)

焼かなくても草は萌え出るだろう。春日野を、ただ春の日の光にまかせておいてほしい。

野焼きをせずに残された春日野へ、春の日が差し、若草が萌え出している場面
野焼きをせずに残された春日野へ、春の日が差し、若草が萌え出している場面
詞書
「題しらず」(前の歌と同じ詞書)
作者
壬生忠見
  1. 1やかずともやかずともやかずとも初句
  2. 2草くさ草くさくさははは萌も萌ももえなむえなむえなむ二句
  3. 3春日野かすがの春日野かすがのかすがのををを三句
  4. 4たゞたゞただ春はる春はるはるののの日ひ日ひひににに四句
  5. 5まかせたらなむまかせたらなむまかせたらなむ結句

引用の仕方

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現代語訳

焼かなくても草は萌え出るだろう。春日野を、ただ春の日の光にまかせておいてほしい。

意訳

春日野では、春になると野焼きをして草の芽吹きを促す。けれども、焼かなくても草は自然に芽を出すだろう。だから野を焼かずに、春の日差しにまかせておいてほしい。

語釈・文法注

もえなむ
「萌え」と「燃え」を掛ける。「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「む」は推量。きっと萌えるだろう。
まかせたらなむ
「なむ」は他に対する願望の終助詞。まかせておいてほしい。

和歌

作者
壬生忠見(みぶのただみ) 生没年未詳(十世紀中ごろ)
壬生忠岑の子。天徳四年(960)の内裏歌合で平兼盛と競って敗れ、それを嘆いて病死したという逸話がある。三十六歌仙の一人。
出典
『新古今和歌集』巻第一・春歌上・78番
歌体
短歌
状況
題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。

修辞

掛詞
「もえ」に「萌え」と「燃え」を掛ける。
縁語
「やく」「もえ」「日」。

解説

忠見の歌。野焼きの風習をふまえ、「春日野」と「春の日」をことば遊びのように重ねている。

関連

出典

底本
『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、14頁(コマ17)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日