新古今和歌集 巻第一 春歌上 66番
常磐なる
いつも変わらない山の岩根に生えている苔の、春雨が染めたのではない緑の上にも、春雨は降っている。

現代語訳
〔詞書〕百首歌を献上した時の歌。
いつも変わらない山の岩根に生えている苔の、春雨が染めたのではない緑の上にも、春雨は降っている。
意訳
春雨は木々の若葉を緑に染めるといわれる。けれども、常に変わらない岩根の苔は、春雨に染められなくても、もとから緑である。その苔の上にも、春雨は静かに降り注いでいる。前の伊勢の歌の「春雨が緑を染める」発想を受けて、一ひねりした歌。
語釈・文法注
- 常磐
- 永久に変わらないこと。
- むす
- 生える。
- 染めぬ綠
- 春雨が染めたのではない、もとからの緑。
和歌
- 作者
- 藤原良経(後京極摂政)(ふじわらのよしつね) 1169–1206
九条兼実の子。摂政・太政大臣に至った。『新古今和歌集』の仮名序を書き、和歌所の寄人の筆頭として撰集を主導した。叔父の慈円や藤原定家ら御子左家の歌人を庇護し、清新で格調の高い歌を詠んだ。書にもすぐれ、後京極流の祖とされる。『新古今和歌集』に七十九首が入る。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・66番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「百首の歌奉りしとき」(百首歌を献上した時の歌)。
修辞
- 体言止めではなく「春雨ぞふる」と係り結びで結ぶ
- 体言止めではなく「春雨ぞふる」と係り結びで結ぶ。
解説
良経の歌。春雨が草木を染めるという伝統的な趣向を逆手にとり、苔の不変の緑を詠む。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、12頁(コマ16)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日