新古今和歌集 巻第一 春歌上 65番
水の面に
水面に綾織物の模様を織り乱している春雨が、山の緑をも一面に染めているのだろうか。

現代語訳
〔詞書〕寛平の御代の、皇太后(班子女王)の宮の歌合の歌。
水面に綾織物の模様を織り乱している春雨が、山の緑をも一面に染めているのだろうか。
意訳
春雨が水面に落ちて、綾織物のような細かな波紋を織りなしている。この雨が、山の木々の緑までも一面に染め上げているのだろう。雨を織物を織り、布を染める職人に見立てる。
語釈・文法注
- 綾
- 模様を織り出した絹織物。雨の波紋をたとえる。
- なべて
- 一面に、すべて。
- 染むらむ
- 「らむ」は目の前にない事柄を推量する。染めているのだろう。
和歌
- 作者
- 伊勢(いせ) 872?–938?
伊勢守藤原継蔭の娘。宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の皇子を産んだ。のち敦慶親王との間に娘の中務(歌人)を産んだ。『古今和歌集』に女性歌人として最も多い歌が入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・65番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「寛平の御時、后の宮の歌合の歌」(寛平の御代の、皇太后(班子女王)の宮の歌合の歌)。
修辞
- 見立て
- 春雨の波紋を綾織物の模様に、木々の芽吹きを雨が染めることに見立てる。
- 縁語
- 「綾」「織り」「染む」。
解説
寛平五年(893)ごろの「寛平御時后宮歌合」での作。伊勢は『古今和歌集』の時代を代表する女性歌人。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、12頁(コマ16)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日