新古今和歌集 巻第一 春歌上 63番
霜まよふ
秋に霜の乱れ飛ぶ空で萎れてやって来た雁が、北へ帰っていくその翼に、今は春雨が降っている。

現代語訳
〔詞書〕守覚法親王の五十首歌に詠んだ歌。
秋に霜の乱れ飛ぶ空で萎れてやって来た雁が、北へ帰っていくその翼に、今は春雨が降っている。
意訳
秋、霜が乱れ散る寒い空を、羽を萎れさせながら渡ってきた雁。その雁が今、北へ帰っていく翼には、春雨が降りかかっている。秋の到来と春の帰りを一首の中に重ね、雁の旅の長さを思わせる。
語釈・文法注
- 霜まよふ
- 霜が乱れ散る。
- 萎れし
- ぐったりとした。濡れてしおれた。
- 雁がね
- 雁。
和歌
- 作者
- 藤原定家(ふじわらのさだいえ(ていか)) 1162–1241
藤原俊成の子。『新古今和歌集』の撰者の一人で、のち『新勅撰和歌集』を単独で撰び、『小倉百人一首』を選んだとされる。妖艶・有心の美を追求した新古今時代の代表的歌人。日記『明月記』、歌論書『近代秀歌』『毎月抄』がある。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・63番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「守覺法親王の五十首の歌に」(守覚法親王の五十首歌に詠んだ歌)。
修辞
- 本歌取り
- 『古今和歌集』の「白雲に羽うちかはし飛ぶ雁の数さへ見ゆる秋の夜の月」などの雁の歌の伝統をふまえる。
- 体言止め
- 体言止め。
解説
定家の歌。秋の霜と春の雨を対照させ、季節の巡りを雁の翼の上に表している。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、12頁(コマ16)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日