新古今和歌集 巻第一 春歌上 59番
聞く人ぞ
その声を聞く人のほうが涙を落とすことだ。北へ帰る雁が鳴いて飛んで行くのが聞こえる、明け方の空よ。

現代語訳
〔詞書〕刑部卿頼輔が歌合を催しました時に、詠んで送った歌。
その声を聞く人のほうが涙を落とすことだ。北へ帰る雁が鳴いて飛んで行くのが聞こえる、明け方の空よ。
意訳
明け方の空を、北へ帰る雁が鳴きながら飛んでいく。鳴いているのは雁だが、その声を聞いている人のほうが、別れの悲しさに涙を落としてしまう。
語釈・文法注
- 聞く人ぞ
- 「ぞ」は強意の係助詞で、「落つる」が連体形の結び。
- 鳴きて行くなる
- 「なる」は音を聞いて推定する助動詞「なり」の連体形。鳴いて行くようだ。
和歌
- 作者
- 藤原俊成(ふじわらのとしなり(しゅんぜい)) 1114–1204
藤原定家の父。『千載和歌集』を撰び、歌論書『古来風体抄』を著した。余情と「幽玄」を重んじる歌風で、御子左家の歌学の基礎を築き、新古今時代の歌人たちを導いた。法名は釈阿。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・59番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「刑部卿賴輔歌合し侍りけるによみてつかはしける」(刑部卿頼輔が歌合を催しました時に、詠んで送った歌)。
解説
雁が「鳴く」のと、人が「泣く」のを対比させる。俊成らしい哀感のこもった一首。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、11頁(コマ15)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日