古典ライブラリー

新古今和歌集 巻第一 春歌上 55番

照りもせず

大江千里(おおえのちさと)

明るく照るのでもなく、すっかり曇ってしまうのでもない、春の夜のおぼろ月夜に及ぶものはない。

春の夜の空に、明るすぎず暗すぎないおぼろ月が浮かんでいる場面
春の夜の空に、明るすぎず暗すぎないおぼろ月が浮かんでいる場面
作者
大江千里
  1. 1文集もんじふ文集もんじふもんじゅう嘉陵かりよう嘉陵かりようかりょう春夜しゆんや春夜しゆんやしゅんや詩し詩ししににに不明不暗ふめいふあん不明不暗ふめいふあんふめいふあん朧々月ろうろうげつ朧々月ろうろうげつろうろうげつといへることといへることといえることをををよみよみよみ侍はべ侍はべはべりけるりけるりける詞書
  2. 2照て照ててりもせずりもせずりもせず初句
  3. 3曇くも曇くもくもりもりもりもはははてぬてぬてぬ二句
  4. 4春はる春はるはるののの夜よ夜よよののの三句
  5. 5朧おぼろ朧おぼろおぼろ月夜づきよ月夜づきよづきよににに四句
  6. 6しくものぞなきしくものぞなきしくものぞなき結句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕『白氏文集』の「嘉陵春夜詩」の一節、「明らかならず暗からず、朧々たる月」を詠みました歌。

明るく照るのでもなく、すっかり曇ってしまうのでもない、春の夜のおぼろ月夜に及ぶものはない。

意訳

はっきりと照ってもいないし、すっかり曇ってもいない。そんな春の夜のぼんやりとかすんだ月夜ほど、すばらしいものはない。春の夜の朧月の美しさを、漢詩の一節を和歌に移しかえて詠む。

語釈・文法注

文集
唐の白居易(白楽天)の詩文集『白氏文集』。平安時代の貴族に広く愛読された。
曇りもはてぬ
すっかり曇ってしまうのでもない。
しくものぞなき
「しく」は及ぶ、匹敵する。及ぶものはない。

和歌

作者
大江千里(おおえのちさと) 生没年未詳(九世紀後半〜十世紀初め)
参議大江音人の子。漢学に通じ、寛平六年(894)に、漢詩の句を題にして和歌を詠んだ『句題和歌(大江千里集)』を宇多天皇に献上した。
出典
『新古今和歌集』巻第一・春歌上・55番
歌体
短歌
状況
詞書「文集嘉陵春夜詩に不明不暗朧々月といへることをよみ侍りける」(『白氏文集』の「嘉陵春夜詩」の一節、「明らかならず暗からず、朧々たる月」を詠みました歌)。

解説

大江千里の『句題和歌』(894年)の歌。『源氏物語』の「花宴」の巻で、朧月夜の君がこの歌を口ずさむ場面があり、よく知られた歌だった。

関連

出典

底本
『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、10頁(コマ15)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日