新古今和歌集 巻第一 春歌上 54番
ひとりのみ
私ひとりだけが眺めているうちに散ってしまった、梅の花よ。その美しさがわかるほどの人は、訪ねて来ないままで。

現代語訳
私ひとりだけが眺めているうちに散ってしまった、梅の花よ。その美しさがわかるほどの人は、訪ねて来ないままで。
意訳
梅の花は、私がひとりで眺めているうちに散ってしまった。この花の美しさを本当にわかってくれる人は、とうとう訪ねてこなかった。花を分かち合う人のいない寂しさを詠む。
語釈・文法注
- しるばかりなる人
- (花の美しさを)理解できるほどの人。
- 訪ひこで
- 「で」は打消の接続助詞。訪ねて来ないで。
和歌
- 作者
- 八条院高倉(はちじょういんのたかくら) 生没年未詳(十二世紀後半〜十三世紀前半)
藤原惟方の娘とされ、鳥羽天皇の皇女八条院暲子内親王に仕えた女房。後鳥羽院の歌壇で活躍した。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・54番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。
修辞
- 倒置法
- 「散りぬ」で切れ、その事情を下の句で示す。
解説
本歌取り:『古今和歌集』の「君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る」(紀友則)をふまえる。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、10頁(コマ15)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日