新古今和歌集 巻第一 春歌上 56番
あさみどり
薄緑の空も、桜の花も一つになって霞みながら、おぼろに見える春の夜の月よ。

- 1祐子內親王祐子內親王ゆうしないしんのう、、、藤壺藤壺ふじつぼにすみにすみにすみ侍侍はべりけるにりけるにりけるに、、、女房女房にようぼう上人上人うえびとなどさるべきかぎりなどさるべきかぎりなどさるべきかぎり物語物語ものがたりりしてりしてりして、、、春春はる秋秋あきのあはれのあはれのあわれ何何いずれにかれにかれにか心心こころひくなどひくなどひくなど爭爭あらそひひい侍侍はべりけるにりけるにりけるに、、、人々人々ひとびとおほくおほくおおく秋秋あきににに心心こころをををよせよせよせ侍侍はべりければりければりければ詞書
- 2あさみどりあさみどりあさみどり初句
- 3花花はなもひとつにもひとつにもひとつに二句
- 4霞霞かすみつゝみつゝみつつ三句
- 5朧朧おぼろににに見見みゆるゆるゆる四句
- 6春春はるののの夜夜よののの月月つき結句
現代語訳
〔詞書〕祐子内親王が藤壺に住んでいらっしゃった時に、女房や殿上人などのしかるべき人々だけで語り合って、春と秋の情趣はどちらに心がひかれるかなどと議論しました時に、人々の多くが秋に心を寄せましたので詠んだ歌。
薄緑の空も、桜の花も一つになって霞みながら、おぼろに見える春の夜の月よ。
意訳
薄緑色に霞む空と白い桜の花がとけあって、一つの霞となっている。その中に、春の夜の月がおぼろに見えている。秋をよしとする人々に対して、春の夜の美しさを示してみせた歌。
語釈・文法注
- あさみどり
- 薄い緑色。ここでは春霞のかかった空の色。
- 花もひとつに
- 花も(空と)一つになって。
- 霞みつゝ
- 霞みながら。
和歌
- 作者
- 菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ) 1008–?
菅原道真の子孫、菅原孝標の娘。『更級日記』の作者。『夜の寝覚』『浜松中納言物語』の作者とする説もある。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・56番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「祐子內親王、藤壺にすみ侍りけるに、女房上人などさるべきかぎり物語りして、春秋のあはれ何れにか心ひくなど爭ひ侍りけるに、人々おほく秋に心をよせ侍りければ」(祐子内親王が藤壺に住んでいらっしゃった時に、女房や殿上人などのしかるべき人々だけで語り合って、春と秋の情趣はどちらに心がひかれるかなどと議論しました時に、人々の多くが秋に心を寄せましたので詠んだ歌)。
修辞
- 体言止め
- 「春の夜の月」。
解説
作者は『更級日記』の作者、菅原孝標女。この春秋優劣論の場面は『更級日記』にも書かれており、作者は源資通と出会ったこの夜のことを印象深く記している。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、10〜11頁(コマ15)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日