新古今和歌集 巻第一 春歌上 52番
眺めつる
私が眺めていた今日という日が、いつか昔のことになってしまったとしても、軒端の梅よ、私のことを忘れないでおくれ。

現代語訳
〔詞書〕百首歌を献上しました時の、春の歌。
私が眺めていた今日という日が、いつか昔のことになってしまったとしても、軒端の梅よ、私のことを忘れないでおくれ。
意訳
今日こうして軒端の梅を眺めている。この日もやがて遠い昔となり、自分もこの世からいなくなるかもしれない。それでも梅よ、私のことを覚えていてほしい。死を予感するかのような、静かな願いをこめた歌。
語釈・文法注
- 眺めつる
- じっと見つめていた。もの思いにふけって眺める意も含む。
- なりぬとも
- なってしまっても。「とも」は逆接の仮定。
- 忘るな
- 「な」は禁止の終助詞。
和歌
- 作者
- 式子内親王(しょくしないしんのう) ?–1201
後白河天皇の皇女。賀茂の斎院を務めた。藤原俊成に和歌を学び、内に秘めた激しい情を静かな調べで詠んだ。『新古今和歌集』に女性歌人として最も多い四十九首が入る。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・52番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「百首の歌奉りしに、春の歌」(百首歌を献上しました時の、春の歌)。
修辞
- 擬人法
- 軒端の梅に呼びかける。
解説
正治二年(1200)の百首歌での作。式子内親王はこの翌年に没しており、自らの死を見つめた歌とも読まれる。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、10頁(コマ15)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日