古典ライブラリー

新古今和歌集 巻第一 春歌上 46番

梅の花

源通具(みなもとのみちとも)

この梅の花の香りは、誰の袖が触れて移った香りなのかと、昔のままの春の月に尋ねてみたいものだ。

梅の花に顔を寄せる歌人が、その香りを誰かの袖になぞらえて春の月を仰いでいる場面
梅の花に顔を寄せる歌人が、その香りを誰かの袖になぞらえて春の月を仰いでいる場面
作者
右衞門督通具(源通具)
  1. 1千五百番せんごひやくばん千五百番せんごひやくばんせんごひゃくばん歌合うたあはせ歌合うたあはせうたあわせににに詞書
  2. 2梅うめ梅うめうめののの花はな花はなはな初句
  3. 3誰た誰たたががが袖そで袖そでそでふれしふれしふれし二句
  4. 4匂にほ匂にほにおひぞとひぞといぞと三句
  5. 5春はる春はるはるやむかしのやむかしのやむかしの四句
  6. 6月つき月つきつきにとにとにとははわゞやゞやばや結句

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔詞書〕千五百番歌合に詠んだ歌。

この梅の花の香りは、誰の袖が触れて移った香りなのかと、昔のままの春の月に尋ねてみたいものだ。

意訳

梅の花の香りは、昔の恋人の袖の香りが移ったものではないか。それを、昔のままの春の月に尋ねてみたい。梅の香りから昔の恋を思い出す、物語的な情趣の歌。

語釈・文法注

誰が袖ふれし
誰の袖が触れた。「し」は過去の助動詞「き」の連体形。
とはゞや
「ばや」は自己の希望を表す終助詞。尋ねたいものだ。

和歌

作者
源通具(みなもとのみちとも) 1171–1227
内大臣源通親の子。大納言に至った。『新古今和歌集』の撰者の一人で、撰者名の筆頭に挙がる。妻は歌人の俊成女。
出典
『新古今和歌集』巻第一・春歌上・46番
歌体
短歌
状況
詞書「千五百番歌合に」(千五百番歌合に詠んだ歌)。

修辞

本歌取り
『古今和歌集』の「色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも」と、『伊勢物語』の「月やあらぬ春や昔の春ならぬ」をふまえる。

解説

二つの古歌を巧みに組み合わせた本歌取りの歌。作者の通具は撰者の一人で、俊成女の夫。

関連

出典

底本
『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、9頁(コマ14)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日