新古今和歌集 巻第一 春歌上 45番
梅が香に
梅の香に昔のことを尋ねると、春の月は答えてくれず、その光だけが袖に映っている。

現代語訳
梅の香に昔のことを尋ねると、春の月は答えてくれず、その光だけが袖に映っている。
意訳
梅の香りに誘われて昔の思い出を尋ねてみるが、春の月は何も答えない。ただ、その光が涙に濡れた袖に映っているばかりだ。過ぎ去った昔を懐かしむ心を、梅と月に託して詠む。
語釈・文法注
- 昔をとへば
- 昔のことを問いかけると。
- こたへぬ影ぞ
- 答えない月の光が。「ぞ」は強意の係助詞で、「うつれる」が連体形の結び。
- うつれる
- 「る」は存続の助動詞「り」の連体形。
和歌
- 作者
- 藤原家隆(ふじわらのいえたか(かりゅう)) 1158–1237
藤原俊成に和歌を学び、定家と並ぶ新古今時代の代表的歌人。『新古今和歌集』の撰者の一人。温雅で清澄な歌風で、生涯に六万首を詠んだと伝えられる。晩年は出家して壬生二品と呼ばれた。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・45番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「百首の歌奉りし時」(百首歌を献上した時の歌)。
修辞
- 本歌取り
- 『伊勢物語』第四段の「月やあらぬ春や昔の春ならぬ」をふまえる。
解説
前の定家の歌と同じく、『伊勢物語』の業平の歌の世界を背景にしている。梅・月・袖を取り合わせた歌が、ここから続く。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、9頁(コマ14)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日