新古今和歌集 巻第一 春歌上 44番
梅の花
梅の花が香りを移した袖の上に、軒から漏れてくる月の光が、香りと競い合うように映っている。

現代語訳
〔詞書〕百首歌を献上した時の歌。
梅の花が香りを移した袖の上に、軒から漏れてくる月の光が、香りと競い合うように映っている。
意訳
梅の香りが移った袖の上に、軒端から漏れる月の光が差しこむ。香りと光が袖の上で美しさを競い合っているかのようだ。梅と月を取り合わせた、艶やかな春の夜の情景。
語釈・文法注
- 匂ひをうつす
- 香りを移す。
- 軒もる月
- 軒の間から漏れて差す月の光。
- 影
- 月の光。
- あらそふ
- 競い合う。
和歌
- 作者
- 藤原定家(ふじわらのさだいえ(ていか)) 1162–1241
藤原俊成の子。『新古今和歌集』の撰者の一人で、のち『新勅撰和歌集』を単独で撰び、『小倉百人一首』を選んだとされる。妖艶・有心の美を追求した新古今時代の代表的歌人。日記『明月記』、歌論書『近代秀歌』『毎月抄』がある。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・44番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「百首の歌奉りし時」(百首歌を献上した時の歌)。
修辞
- 本歌取り
- 『伊勢物語』第四段の「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」の世界をふまえるとされる。
- 擬人法
- 擬人法。
解説
正治二年(1200)の百首歌での作。香りと光という異なる感覚を一つの袖の上に重ねる、定家らしい技巧的な歌。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、8頁(コマ14)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日