新古今和歌集 巻第一 春歌上 40番
大空は
大空は梅の香りに霞みながら、それでも曇りきってはいない、春の夜の月よ。

現代語訳
〔詞書〕守覚法親王の家の五十首歌に詠んだ歌。
大空は梅の香りに霞みながら、それでも曇りきってはいない、春の夜の月よ。
意訳
大空いっぱいに梅の香りが満ちて、まるで香りが霞となって空を覆っているかのようだ。その中で、春の夜の月は曇りきることもなく、ほのかに照っている。香りと光のとけあう春の夜を描く。
語釈・文法注
- 霞みつゝ
- 「つつ」は継続。霞みながら。
- 曇りもはてぬ
- 「はつ」は「すっかり〜する」意。曇りきってはいない。
和歌
- 作者
- 藤原定家(ふじわらのさだいえ(ていか)) 1162–1241
藤原俊成の子。『新古今和歌集』の撰者の一人で、のち『新勅撰和歌集』を単独で撰び、『小倉百人一首』を選んだとされる。妖艶・有心の美を追求した新古今時代の代表的歌人。日記『明月記』、歌論書『近代秀歌』『毎月抄』がある。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・40番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「守覺法親王の家の五十首の歌に」(守覚法親王の家の五十首歌に詠んだ歌)。
修辞
- 本歌取り
- 大江千里の「照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき」(55番)をふまえる。
- 体言止め
- 体言止め。
解説
梅の香りが空を霞ませるという大胆な発想は、香りと視覚を結びつける新古今時代らしい表現である。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、8頁(コマ14)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日