新古今和歌集 巻第一 春歌上 37番
霞たつ
霞が立つ末の松山では、ほのぼのと夜が明けていき、波から離れていく横雲がたなびく空よ。

現代語訳
〔詞書〕摂政太政大臣(良経)の家の百首歌合で、「春曙(春の夜明け)」という題で詠みました歌。
霞が立つ末の松山では、ほのぼのと夜が明けていき、波から離れていく横雲がたなびく空よ。
意訳
霞に包まれた末の松山。夜明けの光の中で、海の上に横たわっていた雲が、波から離れて空へと浮かび上がっていく。夜明けの移ろいを、雲の動きでとらえる。
語釈・文法注
- 末の松山
- 陸奥国(宮城県)の歌枕。「末の松山波も越えなむ」(古今集)など、波が越えないものとして詠まれた。
- 橫雲
- 明け方に横にたなびく雲。
和歌
- 作者
- 藤原家隆(ふじわらのいえたか(かりゅう)) 1158–1237
藤原俊成に和歌を学び、定家と並ぶ新古今時代の代表的歌人。『新古今和歌集』の撰者の一人。温雅で清澄な歌風で、生涯に六万首を詠んだと伝えられる。晩年は出家して壬生二品と呼ばれた。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・37番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「攝政太政大臣の家の百首の歌合に春曙といふ心をよみ侍りける」(摂政太政大臣(良経)の家の百首歌合で、「春曙(春の夜明け)」という題で詠みました歌)。
修辞
- 本歌取り
- 『古今和歌集』の「君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ」をふまえる。
- 体言止め
- 体言止め。
解説
六百番歌合での作。「波にはなるる横雲」という新しい表現に、家隆の清新な感覚がある。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、7頁(コマ13)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日