新古今和歌集 巻第一 春歌上 35番
奈古の海の
奈呉の海の霞の切れ間から遠くを眺めると、沈む夕日を洗うように、沖の白波が寄せている。

現代語訳
〔詞書〕「晩霞(夕暮れの霞)」という題を詠んだ歌。
奈呉の海の霞の切れ間から遠くを眺めると、沈む夕日を洗うように、沖の白波が寄せている。
意訳
夕暮れの奈呉の海に霞が立ちこめている。その切れ間から沖を見ると、海に沈もうとする夕日を、白波が洗っているように見える。夕日と白波の鮮やかな対比に、春の夕暮れの海の美しさを描く。
語釈・文法注
- 奈古の海
- 越中国(富山県)の海。摂津国(大阪府)の地名とする説もある。
- 入日
- 夕日。
- 沖つ白浪
- 沖の白波。「つ」は「の」の意の古い格助詞。
和歌
- 作者
- 藤原実定(ふじわらのさねさだ) 1139–1191
右大臣藤原公能の子で、藤原俊成の甥。左大臣に至った。後徳大寺左大臣と呼ばれる。管絃にもすぐれ、『平家物語』には福原遷都の後に旧都を訪ねる逸話がある。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・35番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「晩霞といふことをよめる」(「晩霞(夕暮れの霞)」という題を詠んだ歌)。
修辞
- 擬人法
- 白波が入日を「あらふ」と表す。
- 体言止め
- 体言止め。
解説
作者の実定は後徳大寺左大臣と呼ばれた歌人。「入日をあらふ」という大胆な表現で知られる歌である。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、7頁(コマ13)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日