新古今和歌集 巻第一 春歌上 23番
空はなほ
空はやはり霞みきらず、風は冷たく冴えて、雪が降りそうな気配に曇っている、春の夜の月よ。

現代語訳
〔詞書〕自邸での百首歌合で、余寒の心を詠んだ歌。
空はやはり霞みきらず、風は冷たく冴えて、雪が降りそうな気配に曇っている、春の夜の月よ。
意訳
暦の上では春だが、空はまだ霞みきらず、風は冷たい。春の夜の月も、おぼろに霞むのではなく、雪模様の雲に曇っている。春らしさの訪れない、冬の名残の夜空を詠む。
語釈・文法注
- 餘寒
- 立春ののちになお残る寒さ。
- 霞みもやらず
- 「やる」は補助動詞で、「〜しきる」。霞みきらない。
- 雪げ
- 雪の降りそうな様子。雪模様。
和歌
- 作者
- 藤原良経(後京極摂政)(ふじわらのよしつね) 1169–1206
九条兼実の子。摂政・太政大臣に至った。『新古今和歌集』の仮名序を書き、和歌所の寄人の筆頭として撰集を主導した。叔父の慈円や藤原定家ら御子左家の歌人を庇護し、清新で格調の高い歌を詠んだ。書にもすぐれ、後京極流の祖とされる。『新古今和歌集』に七十九首が入る。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・23番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「家の百首の歌合に、餘寒の心を」(自邸での百首歌合で、余寒の心を詠んだ歌)。
修辞
- 体言止め
- 「春の夜の月」。
解説
建久四年(1193)ごろ、良経の家で行われた「六百番歌合」での作。春の夜の月は霞んだ朧月が典型だが、それを冬めいた雪雲の月に置き換えて、余寒の情趣を出している。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、5頁(コマ12)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日