新古今和歌集 巻第一 春歌上 16番
さゞ浪や
さざ波の寄せる志賀の浜の松は、すっかり古木になってしまった。いったい誰の時代に引いた子の日の松なのだろうか。

現代語訳
〔詞書〕日吉社に詠んで奉納した、子の日の歌。
さざ波の寄せる志賀の浜の松は、すっかり古木になってしまった。いったい誰の時代に引いた子の日の松なのだろうか。
意訳
琵琶湖のほとり、志賀の浜に立つ老松を見て、これはいつの世か、誰かが子の日の遊びで引いて植えた小松が育ったものだろうかと思いやる。長い年月の流れと、それを見守ってきた神への思いがこめられている。
語釈・文法注
- さざ浪や
- 「志賀」にかかる枕詞的な表現。
- ふりにけり
- 古くなってしまった。
- 子の日
- 正月の初めの子の日に野に出て小松を引き、若菜を摘んで長寿を祈った行事。
- なるらむ
- 「らむ」は原因・理由を推量する。
和歌
- 作者
- 藤原俊成(ふじわらのとしなり(しゅんぜい)) 1114–1204
藤原定家の父。『千載和歌集』を撰び、歌論書『古来風体抄』を著した。余情と「幽玄」を重んじる歌風で、御子左家の歌学の基礎を築き、新古今時代の歌人たちを導いた。法名は釈阿。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・16番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「日吉社によみて奉りける子の日の歌」(日吉社に詠んで奉納した、子の日の歌)。
修辞
- 枕詞
- 「さざ浪や」が「志賀」にかかる。
解説
日吉社は比叡山のふもと、近江の坂本にある神社。俊成が神に奉納した歌で、神域の松の長い年月を、子の日の行事と結びつけて詠む。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、3頁(コマ11)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日