新古今和歌集 巻第一 春歌上 14番
ゆきて見ぬ
行って見ることのできない人も思いをはせよと、春の野の形見として摘んできた若菜であったよ。

現代語訳
〔詞書〕延喜の御代の屏風に添えた歌。
行って見ることのできない人も思いをはせよと、春の野の形見として摘んできた若菜であったよ。
意訳
春の野に出られない人にも、その美しさをしのんでもらおうと、記念として若菜を摘んで帰った。若菜を人に贈る心づかいを、屏風絵の人物に代わって詠む。
語釈・文法注
- 忍べ
- 思い起こしなさい、しのびなさい。命令形。
- かたみ
- 思い出のよすがとなる物。「筐(かたみ)=竹かご」を掛けるとする説もある。
- なりけり
- 「けり」は詠嘆。
和歌
- 作者
- 紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・14番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「延喜の御時屏風に」(延喜の御代の屏風に添えた歌)。
修辞
- 掛詞
- 「かたみ」に「形見」と若菜を入れる「筐(かたみ)」を掛けるとする説がある。
解説
醍醐天皇の時代(延喜年間)の屏風歌。作者の貫之は『古今和歌集』の撰者で、屏風歌を数多く詠んだ。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、3頁(コマ11)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日