新古今和歌集 巻第一 春歌上 13番
若菜つむ
若菜を摘む人の袖かと見えることだ。春日野の飛火野の野辺に、まだらに消え残っている雪は。

現代語訳
〔詞書〕崇徳院に百首歌を献上しました時の、春の歌。
若菜を摘む人の袖かと見えることだ。春日野の飛火野の野辺に、まだらに消え残っている雪は。
意訳
春日野の飛火野に、まだらに残る白い雪。それがまるで、若菜を摘みに来た人々の白い袖のように見える。残雪を若菜摘みの人の袖に見立て、野に人の姿を浮かび上がらせる。
語釈・文法注
- 飛火の野邊
- 奈良の春日野の一部で、飛火野という。古くのろし(烽火)台があったことによる名。
- むら消え
- まだらに消え残っていること。
- とぞ見ゆる
- 「ぞ」は強意の係助詞で、「見ゆる」は連体形の結び。
和歌
- 作者
- 藤原教長(ふじわらののりなが) 1109–1180?
大納言藤原忠教の子。参議に至った。崇徳院の近臣で、保元の乱で常陸に流され、のち許されて出家した。書と和歌にすぐれ、古今集の注釈書『古今集註』を著した。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・13番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「崇德院に百首の歌奉りける時、春の歌」(崇徳院に百首歌を献上しました時の、春の歌)。
修辞
- 見立て
- まだらに残る雪を、若菜を摘む人の袖に見立てる。
- 倒置法
- 上の句で「袖とぞ見ゆる」と言い、見立てられたものを下の句で示す。
解説
『久安百首』(1150年ごろ)での作。白い袖と残雪を重ねる視覚的な美しさがある。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、3頁(コマ11)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日