新古今和歌集 巻第一 春歌上 10番
春日野の
春日野の、地面の下で一面に芽ぐんでいる草の上に、そ知らぬ顔で残って見える春の淡雪よ。

現代語訳
〔詞書〕堀河院の御代に、百首歌を献上しました時に、残りの雪の心を詠みました歌。
春日野の、地面の下で一面に芽ぐんでいる草の上に、そ知らぬ顔で残って見える春の淡雪よ。
意訳
春日野では、土の下で草がいっせいに芽を出しはじめている。その上に、春の淡雪が何事もないかのように残っている。見えない下萌えと、目に見える残雪の対比に、早春の野のたたずまいを描く。
語釈・文法注
- 下もえ
- 地中で草の芽が萌え出ること。
- つれなく
- 平然として。素知らぬ様子で。
- あは雪
- うすく積もった、消えやすい雪。
和歌
- 作者
- 源国信(みなもとのくにざね) 1069–1111
右大臣源顕房の子。権中納言に至った。堀河天皇の歌壇で活躍し、『堀河百首』の作者の一人。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・10番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「堀川院の御時、百首の歌奉りけるに、殘りの雪の心をよみ侍りける」(堀河院の御代に、百首歌を献上しました時に、残りの雪の心を詠みました歌)。
修辞
- 体言止め
- 「春のあは雪」で結ぶ。
解説
『堀河百首』(康和年間〈1099〜1104〉)の題「残雪」の歌。「下もえ」は、ひそかに思い焦がれる恋の意にも使われることばで、のちの新古今時代に好まれた。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、2頁(コマ11)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日