新古今和歌集 巻第一 春歌上 5番
今日といへば
今日が立春だというので、唐土(中国)までも行き渡る春なのに、都にだけ来るものと思っていたことだ。

現代語訳
〔詞書〕入道前関白太政大臣(藤原兼実)が右大臣であった時、百首歌を詠ませました折に、立春の心を詠んだ歌。
今日が立春だというので、唐土(中国)までも行き渡る春なのに、都にだけ来るものと思っていたことだ。
意訳
立春の日、春は都だけでなく、遠い唐土にまで同じように訪れている。そう気づいて、春を都だけのものと思い込んでいた自分の狭い心を振り返る。春の広がりを、海の向こうにまで思いを馳せる大きな構図で詠む。
語釈・文法注
- もろこし
- 中国。遠く隔たった国の代表。
- 行く春
- ここでは過ぎ去る春ではなく、各地へ行き渡る春。
- 思ひけるかな
- 「けるかな」は気づきの詠嘆。
和歌
- 作者
- 藤原俊成(ふじわらのとしなり(しゅんぜい)) 1114–1204
藤原定家の父。『千載和歌集』を撰び、歌論書『古来風体抄』を著した。余情と「幽玄」を重んじる歌風で、御子左家の歌学の基礎を築き、新古今時代の歌人たちを導いた。法名は釈阿。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・5番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「入道前關白太政大臣右大臣に侍りける時、百首の歌よませ侍りけるに、立春の心を」(入道前関白太政大臣(藤原兼実)が右大臣であった時、百首歌を詠ませました折に、立春の心を詠んだ歌)。
解説
詞書の「入道前関白太政大臣」は九条兼実。治承二年(1178)ごろの「右大臣家百首」での作。作者の俊成は定家の父で、新古今時代の歌人たちの師にあたる。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、1〜2頁(コマ10)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日