新古今和歌集 巻第一 春歌上 2番
ほの〴〵と
ほのぼのと、春はまず空にやって来たらしい。天の香具山に霞がたなびいている。

現代語訳
〔詞書〕春の初めの歌。
ほのぼのと、春はまず空にやって来たらしい。天の香具山に霞がたなびいている。
意訳
夜明けの光の中で、天の香具山に霞がうっすらとかかっているのを見て、春はまず空から訪れたのだと感じ取る。天皇が国見をした神聖な山に春の兆しを見る、帝王の歌らしい大らかな一首。
語釈・文法注
- ほのぼのと
- ほのかに明るく。
- 來にけらし
- 「けらし」は「けるらし」のつづまった形で、根拠のある推量。来たらしい。
- 天の香具山
- 大和三山の一つ。天から降りてきた山という伝承があり、神聖な山とされた。
和歌
- 作者
- 後鳥羽院(ごとばいん) 1180–1239
第八十二代天皇。譲位後に院政を行い、和歌所を置いて『新古今和歌集』の撰集を命じ、自らも撰歌と切継に深く関わった。承久の乱(1221)に敗れて隠岐に配流され、配所でも集の精選(隠岐本)を続けた。『新古今和歌集』では「太上天皇」と記され、三十三首が入る。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・2番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「春のはじめの歌」(春の初めの歌)。
修辞
- 本歌取り
- 『万葉集』の「ひさかたの天の香具山このゆふべ霞たなびく春立つらしも」(柿本人麻呂歌集)をふまえる。
解説
作者は撰集を命じた後鳥羽院。巻頭の良経の歌に続けて、上皇の歌を二首目に置く。万葉の古歌を下敷きにして、雄大な春の訪れを詠む。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、1頁(コマ10)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日