古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4511〜4513番

鴛鴦の住む 君がこの山齋

作者未詳

中臣清麻呂の家の庭園を見て作った歌三首。鴛鴦の住むあなたのこの庭を今日見ると、馬酔木の花も咲いていたという三方王の歌、池の水に影まで映って咲き匂う馬酔木の花を袖にしごき入れようという家持の歌、磯陰の見える池の水が照り輝くほどに咲いている馬酔木が散るのが惜しいという甘南備伊香の歌。

池のほとりに白く咲き匂う馬酔木と鴛鴦

題詞山齋に屬目して作れる歌三首

  1. 1鴛鴦をし鴛鴦をしおしののの住す住すすむむむ乎之能須牟4511 三方王
  2. 2君きみ君きみきみがががこのこのこの山齋しま山齋しましま伎美我許乃之麻
  3. 3今日けふ今日けふきょう見み見みみれれればばば家布美禮婆
  4. 4馬醉木あしび馬醉木あしびあしびののの花はな花はなはなももも安之婢乃波奈毛
  5. 5咲さ咲ささきききにににけるけるけるかもかもかも左伎爾家流可母
  6. 6池水いけみづ池水いけみづいけみずににに伊氣美豆爾4512 家持
  7. 7影かげ影かげかげさへさへさえ見み見みみえええててて可氣左倍見要底
  8. 8咲さ咲ささきききにほふにほふにおう佐伎爾保布
  9. 9馬醉木あしび馬醉木あしびあしびののの花はな花はなはなををを安之婢乃波奈乎
  10. 10袖そで袖そでそでににに扱入こき扱入こきこきれれれななな蘇弖爾古伎禮奈
  11. 11磯いそ磯いそいそかげかげかげののの伊蘇可氣乃4513 甘南備伊香
  12. 12見み見みみゆるゆるゆる池水いけみづ池水いけみづいけみず美由流伊氣美豆
  13. 13照て照ててるるるまでまでまでににに氐流麻埿爾
  14. 14咲さ咲ささけけけるるる馬醉木あしび馬醉木あしびあしびののの左家流安之婢乃
  15. 15散ち散ちちらららまくまくまく惜を惜をおしもしもしも知良麻久乎思母

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔4511〕鴛鴦の住む、あなたのこの庭園を今日見ると、馬酔木の花も咲いていたことだ。

〔4512〕池の水に影までも映って、咲き匂う馬酔木の花を、袖にしごき入れよう。

〔4513〕磯陰の見える池の水が照り輝くほどに咲いている馬酔木の花が、散るのは惜しいことだ。

意訳

主人清麻呂の庭園の池と、そのほとりに咲く馬酔木の花の美しさをたたえた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

山齋
「しま」。池や築山のある庭園。
屬目
目に触れたものを詠むこと。
馬醉木
「あしび」。春に白い壺形の花を房状に咲かせる。
扱入れな
しごき入れよう。
散らまく惜しも
散るのが惜しい。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4511〜4513番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平宝字2年2月、中臣清麻呂の家の宴で、庭園の景色を見て作った歌。

修辞

写生
池水に映る馬酔木の花を詠む。

解説

馬酔木は万葉集に十首ほど詠まれ、春の花として親しまれた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、753頁(コマ169)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、890頁(コマ209)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日