古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4080〜4081番

常人の 戀ふと云ふよりは

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

叔母で姑でもある大伴坂上郎女が、越中の家持に都から贈った歌二首。世間の人が恋しいと言うのよりもはるかに越えて、私は死にそうになっているではないかという歌と、この片思いを馬にどっさり背負わせて越の方へ送ったら、人が手伝って運んでくれるだろうかという歌。

片思いの荷を背負わせた馬が、越への道を行く

題詞姑大伴氏坂上郎女、越中守大伴宿禰家持に來贈れる歌二首

  1. 1常つね常つねつね人ひと人ひとひとののの都禰比等能4080
  2. 2戀こ戀ここふふうととと云い云いいふふうよりよりよりははは故布登伊數欲利波
  3. 3餘あま餘あまあまりりりにににててて安麻里爾弖
  4. 4我われ我われわれははは死し死ししぬぬぬべくべくべく和禮波之奴倍久
  5. 5なりなりなりにににたらたらたらずずずややや奈里爾多良受也
  6. 6片思かたおもひ片思かたおもひかたおもいををを可多於毛比遠4081
  7. 7馬うま馬うまうまににに太馬ふつま太馬ふつまふつまににに宇萬爾布都麻爾
  8. 8負おほ負おほおおせせせ持も持ももててて於保世母天
  9. 9越邊こしべ越邊こしべこしべににに遣や遣ややらららばばば故事部爾夜良波
  10. 10人ひと人ひとひと誂かた誂かたかたははわむむんかもかもかも比登加多波牟可母

引用の仕方

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現代語訳

〔4080〕世間の人が恋しいと言うのよりも、それをはるかに越えて、私は死んでしまいそうになっているではありませんか。

〔4081〕この片思いを、馬にどっさりと背負わせて越の方へ送ったならば、人が引き受けて運んでくれるでしょうか。

意訳

都の坂上郎女が、越中にいる甥で婿の家持を恋しく思う心を、恋歌の誇張とユーモアで詠んだ歌である。世の常の恋しさをはるかに越えて死にそうだと言い、この片思いを馬の背に山ほど積んで越まで送りたいと興じる。

語釈・文法注

文法・本文

常人
「つねひと」。世間の人。
なりにたらずや
なってしまっているではないか。
太馬に
「ふつまに」。馬の背にどっさりと。
越邊
「こしべ」。越の方。
誂はむ
「かたはむ」。引き受けて手伝うだろうか。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。大伴家の家刀自として一族の祭祀を担い、万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4080〜4081番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女が、都から越中守大伴家持に贈った歌。

修辞

誇張
片思いを馬に積んで送るという、恋歌の誇張表現。

解説

坂上郎女は家持の叔母で、その娘の坂上大嬢は家持の妻。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、653頁(コマ119)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、769頁(コマ148)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日