古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1656〜1657番

酒杯に 梅の花浮べ

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

酒杯に梅の花を浮かべて、気の合う仲間どうしで飲んだ後は、散ってもかまわない。お上からも許されている今夜だけ飲む酒なのだ、決して散るな。大伴坂上郎女の歌と、それに答えた歌。

宴の席で、酒杯に梅の花びらが浮かび、人々が杯を交わしている

題詞大伴坂上郎女の歌一首/和ふる歌一首

  1. 1酒さか酒さかさか杯づき杯づきずきににに酒杯爾1656 坂上郎女
  2. 2梅うめ梅うめうめののの花はな花はなはな浮うか浮うかうかべべべ梅花浮
  3. 3念おも念おもおもふふうどちどちどち念共
  4. 4飮の飮ののみみみててて後のち後のちのちにににははは飮而後者
  5. 5散ち散ちちりりりぬぬぬともともともよしよしよし落去登母與之
  6. 6官つかさ官つかさつかさにににももも官爾毛1657 和ふる歌
  7. 7許ゆる許ゆるゆるししし給たま給たまたまへへえりりり縱賜有
  8. 8今こ今ここ夜よひ夜よひよいのみのみのみ今夜耳
  9. 9飮の飮ののまままむむん酒さけ酒さけさけかもかもかも將飮酒可毛
  10. 10散ち散ちちりりりこすこすこすなななゆめゆめゆめ散許須奈由米

引用の仕方

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現代語訳

〔1656〕酒杯に梅の花を浮かべて、気の合う仲間どうしで飲んだ後には、散ってしまってもかまわない。

〔1657〕お上からも許されている酒だ。今夜だけ飲む酒だろうか、いやそうではない。だから決して散ってくれるな。

意訳

坂上郎女が、梅の花を酒杯に浮かべて親しい者どうしで飲んだら、花は散ってもかまわないと歌うと、ある人が、酒宴は禁じられているが親族が少人数で飲むのはお上も許している、今夜限りの酒ではないのだから、梅よ散るなと答えた。

語釈・文法注

文法・本文

念ふどち
気の合う仲間どうし。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。
出典
『万葉集』巻第八・相聞・1656〜1657番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女の歌と、それに答えた歌。当時、都の里での宴会は禁じられていたが、親族一、二人で飲むことは許されていたと左注にある。

解説

酒の禁令という当時の社会の事情を伝える、興味深い歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、336頁(コマ172)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、380頁(コマ196)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日