古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1639〜1640番

沫雪の ほどろほどろに

大伴旅人(おおとものたびと)

沫雪がまだらに降り積もると、奈良の都が思われる。わが家の岡に盛りに咲いている梅の花は、残っている雪と見まちがえることだ。大宰帥大伴旅人の雪の歌と梅の歌。

大宰府の岡に梅の花が咲き、まだらに残る雪と見分けがたい

題詞太宰帥大伴卿、冬の日雪を見て京を憶ふ歌一首/太宰帥大伴卿の梅の歌一首

  1. 1沫あわ沫あわあわ雪ゆき雪ゆきゆきののの沫雪1639 雪
  2. 2ほどろほどろほどろほどろほどろほどろににに保杼呂保杼呂爾
  3. 3零ふ零ふふりりり重し重ししけけけばばば零敷者
  4. 4平城なら平城ならならののの京みや京みやみや師こ師ここししし平城京師
  5. 5念おも念おもおもほほおゆるゆるゆるかもかもかも所念可聞
  6. 6吾わ吾わわががが岳をか岳をかをかににに吾岳爾1640 梅
  7. 7盛さかり盛さかりさかりににに咲さ咲ささけけけるるる盛開有
  8. 8梅うめ梅うめうめののの花はな花はなはな梅花
  9. 9殘のこ殘のこのこれれれるるる雪ゆき雪ゆきゆきををを遺有雪乎
  10. 10まがへまがへまがえつるつるつるかもかもかも亂鶴鴨

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔1639〕沫雪がまだらに降り積もると、奈良の都が思われることだ。

〔1640〕わが家の岡に盛りに咲いている梅の花は、消え残った雪と見まちがえるほどだ。

意訳

大宰府にいた旅人が、冬の日に雪を見て奈良の都を懐かしんだ歌と、岡に咲く白梅が残雪と見分けがたいと詠んだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

ほどろほどろに
まだらに。
まがへ
見まちがえる。

和歌

作者
大伴旅人(665–731)
大伴安麻呂の子で、家持の父。大宰帥として筑紫に赴任し、梅花の宴を開いた。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1639〜1640番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大宰帥大伴旅人が冬の日に雪を見て都を思った歌と、梅の歌。

修辞

見立て
1640番で、白梅と残雪を見まちがえる。

解説

梅と雪の見立ては、旅人の梅花の宴(巻第五)にも通じる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、334頁(コマ171)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、377頁(コマ194)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日