古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1637〜1638番

はだ薄 尾花逆葺き

元正天皇(げんしょうてんのう)

すすきの尾花を逆さに葺き、皮のついた木で造ったこの室は、万代まで栄えよう。奈良の山の黒木で造ったこの室は、いても飽きない。長屋王の佐保の宅での宴で、元正太上天皇と聖武天皇が詠んだ歌。

佐保の長屋王の邸に、すすきで葺いた素朴な黒木の室が建ち、宴が開かれている

題詞太上天皇の御製の歌一首/天皇の御製の歌一首

  1. 1はだはだはだ薄すすき薄すすきすすき波太須珠寸1637 元正太上天皇
  2. 2尾を尾をお花ばな花ばなばな逆さか逆さかさか葺ふ葺ふふききき尾花逆葺
  3. 3黑くろ黑くろくろ木き木ききもちもちもち黑木用
  4. 4造つく造つくつくれれれるるる室むろ室むろむろははは造有室者
  5. 5萬よろづ萬よろづよろず代よ代よよまでまでまでににに迄萬代
  6. 6あをによしあをによしあおによし青丹吉1638 聖武天皇
  7. 7奈良なら奈良ならならののの山やま山やまやまなるなるなる奈良乃山有
  8. 8黑くろ黑くろくろ木き木ききもちもちもち黑木用
  9. 9造つく造つくつくれれれるるる室むろ室むろむろははは造有室者
  10. 10坐ま坐まませせせどどど飽あ飽ああかかかぬぬぬかもかもかも雖居座不飽可聞

引用の仕方

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現代語訳

〔1637〕すすきの尾花を逆さに葺き、皮のついた木で造った室は、万代までも栄えるだろう。

〔1638〕(あをによし)奈良の山の、皮のついた木で造ったこの室は、いても飽きないことだ。

意訳

左大臣長屋王の佐保の邸で宴が開かれたとき、元正太上天皇と聖武天皇が詠んだ歌である。すすきで葺いた素朴な黒木造りの室をたたえ、その永遠の繁栄を祝い、いつまでいても飽きないとほめている。

語釈・文法注

文法・本文

逆葺き
穂先を下にして葺く。
黑木
皮をはがない木材。

和歌

作者
元正天皇(680–748)
草壁皇子の娘。奈良時代の女帝で、聖武天皇に譲位して太上天皇となった。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1637〜1638番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
左大臣長屋王の佐保の邸での宴で、元正太上天皇と聖武天皇が詠んだ歌。

修辞

枕詞
1638番の「あをによし」が「奈良」にかかる。

解説

黒木造りの室は、新嘗祭などの祭りの建物を思わせる、素朴で神聖な造りである。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、333頁(コマ170)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、376頁(コマ194)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日