古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1549番

射部立てて 跡見の岳邊の

紀鹿人(きのかひと)

跡見の岡辺の撫子の花を、房ごと手折って持って行こう。奈良にいる人のために。紀鹿人が大伴稲公の跡見の庄を訪ねたときの旋頭歌。

跡見の岡に撫子の花が咲き、男が房ごと手折っている

題詞典鑄正紀朝臣鹿人、衞門大尉大伴宿禰稻公の跡見庄に至りて作れる歌一首

  1. 1射い射いい部め部めめ立た立たたてててててて射目立而
  2. 2跡見とみ跡見とみとみののの岳をか岳をかおか邊べ邊べべののの跡見乃岳邊之
  3. 3瞿麥なでしこ瞿麥なでしこなでしこののの花はな花はなはな瞿麥花
  4. 4總ふさ總ふさふさ手た手たた折を折をおりりり總手折
  5. 5吾われ吾われわれははは持も持ももちちち去い去いいなななむむん吾者將去
  6. 6寧樂なら寧樂ならなら人びと人びとびとののの爲ため爲ためため寧樂人之爲

引用の仕方

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現代語訳

(射部立てて)跡見の岡辺の撫子の花を、房ごと手折って私は持って行こう。奈良の都の人のために。

意訳

大伴稲公の跡見の庄を訪ねた紀鹿人が、岡辺に咲く撫子を手折って、奈良の都で待つ人へのみやげにしようと歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

射部立てて
狩りの射手を立てる意で「跡見」にかかる。
總
「ふさ」。たくさん、房ごと。

和歌

作者
紀鹿人(生没年未詳)
奈良時代の官人。紀女郎の父。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1549番
歌体
旋頭歌(五七七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
典鋳正紀鹿人が、衛門大尉大伴稲公の跡見の庄を訪ねたときに作った旋頭歌。

修辞

枕詞
「射部立てて」が「跡見」にかかる。

解説

跡見は大伴氏の庄のあった地で、990番にも紀鹿人の跡見の歌がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、321頁(コマ164)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、361頁(コマ186)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日