古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1500番

夏の野の 繁みに咲ける

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

夏の野の茂みに咲いている姫百合が人に知られないように、相手に知られない恋はつらいものなのに。大伴坂上郎女の歌。

夏の野の深い草むらの中に、赤い姫百合がひっそりと咲いている

題詞大伴坂上郎女の歌一首

  1. 1夏なつ夏なつなつののの野ぬ野ぬぬののの夏野乃
  2. 2繁しげ繁しげしげみみみににに咲さ咲ささけけけるるる繁見丹開有
  3. 3姫ひめ姫ひめひめ百合ゆり百合ゆりゆりののの姫由理乃
  4. 4知し知ししらららえええぬぬぬ戀こひ戀こひこいははは不所知戀者
  5. 5苦くる苦くるくるしきしきしきものものものををを苦物乎

引用の仕方

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現代語訳

夏の野の茂みに咲いている姫百合が人に知られないように、相手に知られない恋は、苦しいものなのに。

意訳

夏草の茂みに隠れて咲く小さな姫百合のように、相手に知られることのない片思いのつらさを歌っている。万葉集の恋の歌の中でも名高い一首である。

語釈・文法注

文法・本文

知らえぬ
知られない。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。
出典
『万葉集』巻第八・相聞・1500番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女の歌。

修辞

序詞
「夏の野の繁みに咲ける姫百合の」が「知らえぬ」を導く。

解説

姫百合の可憐な姿と、ひそかな恋心を重ねた、印象鮮やかな歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、314頁(コマ161)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、353頁(コマ182)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日