古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1419番

神奈備の 伊波瀨の杜の

鏡王女(かがみのおおきみ)

神奈備の伊波瀬の杜の呼子鳥よ、ひどく鳴かないでおくれ。私の恋しさがつのるから。鏡王女の春の歌。

春の森の奥から呼子鳥の声が響き、女性が胸に手を当てて聞き入っている

題詞鏡王女の歌

  1. 1神かむ神かむかむ奈な奈なな備び備びびののの神奈備乃
  2. 2伊波瀨いはせ伊波瀨いはせいわせののの杜もり杜もりもりののの伊波瀨乃社之
  3. 3喚よぶ喚よぶよぶ子こ子ここ鳥どり鳥どりどり喚子鳥
  4. 4いたくいたくいたくななな鳴な鳴ななきききそそそ痛莫鳴
  5. 5吾わ吾わわががが戀こひ戀こひこい益まさ益まさまさるるる吾戀益

引用の仕方

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現代語訳

神奈備の伊波瀬の杜の呼子鳥よ、そんなにひどく鳴かないでおくれ。私の恋しさがつのるから。

意訳

人を呼ぶように鳴く呼子鳥の声を聞くと、恋しい人を思う心がいっそうつのる。だからそんなに鳴かないでほしいと、鳥に呼びかけている。

語釈・文法注

文法・本文

喚子鳥
「よぶこどり」。人を呼ぶように鳴く鳥。カッコウの類とされる。

和歌

作者
鏡王女(?–683)
天智天皇に愛され、のちに藤原鎌足の妻となったと伝えられる女性歌人。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1419番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
鏡王女の春の歌。

修辞

呼びかけ
呼子鳥に「いたくな鳴きそ」と呼びかける。

解説

呼子鳥の名から、恋人を呼ぶ心を連想させている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、303頁(コマ155)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、339頁(コマ175)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日