万葉集 巻第六 1030番
妹に戀ひ 吾の松原
妻を恋しく思って、吾の松原を見わたすと、潮の引いた干潟に鶴が鳴きながら渡っていく。伊勢行幸の途中で詠まれた聖武天皇の御製。
場面イラスト(準備中)
題詞天皇の御製の歌一首
現代語訳
妻を恋しく思い、吾の松原を見わたすと、潮の引いた干潟に、鶴が鳴きながら渡っていく。
意訳
「妹に恋ひ吾(あ)が」と、妻を恋しく思う自分の気持ちから「吾の松原」の地名を導き出している。旅先の干潟を鳴き渡る鶴の声が、都を離れた寂しさをいっそうかき立てる。
語釈・文法注
文法・本文
- 妹に戀ひ
- 「吾(あ)が」を導く序。妻を恋しく思う私の、の意をこめる。
和歌
- 作者
- 聖武天皇(701–756)
文武天皇の皇子。奈良時代の天皇で、東大寺の大仏を造立した。 - 出典
- 『万葉集』巻第六・雑歌・1030番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平12年(740)の伊勢行幸の途中、聖武天皇が詠んだ歌。左注は、河口の行宮ではなく朝明の行宮での作かと疑っている。
修辞
- 序詞
- 「妹に戀ひ」が「吾の松原」を導く。
解説
吾の松原は三重県四日市市あたりの海岸とされる。天皇の歌としては珍しく、旅愁を素直に表している。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、248頁(コマ128)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、270頁(コマ141)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日