古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1031番

後れにし 人を思ばく

丹比屋主(たじひのやぬし)

都に残してきた人のことを思って、四泥の埼で木綿を取りかけて、無事であれと祈ることだ。丹比屋主の旅の歌。

海に突き出た岬の神の前で、旅の官人が木綿をかけて祈っている

題詞丹比屋主眞人の歌一首

  1. 1後おく後おくおくれれれにににししし後爾之
  2. 2人ひと人ひとひとををを思しぬ思しぬしぬばくばくばく人乎思久
  3. 3四泥しで四泥しでしでののの埼さき埼さきさき四泥能埼
  4. 4木ゆ木ゆゆ綿ふ綿ふふ取と取ととりりり垂し垂ししでででててて木綿取之泥而
  5. 5さきくさきくさきくとととぞぞぞ念おも念おもおもふふう好往跡其念

引用の仕方

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現代語訳

後に残してきた人のことを思うにつけ、四泥の埼で木綿を取りかけて、無事であれと祈ることだ。

意訳

旅の途中、四泥の埼の神に木綿を手向けて、都に残してきた家族の無事を祈っている。左注は、作者の屋主は河口の行宮から都へ帰されているので、この行幸の歌ではないのではないかと疑っている。

語釈・文法注

文法・本文

思ばく
「しのふ」のク語法。思うことには。
取り垂でて
取って垂らして。
さきく
無事に。

和歌

作者
丹比屋主(生没年未詳)
奈良時代の官人。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1031番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
丹比屋主が、旅の途中の四泥の埼で詠んだ歌。伊勢行幸の歌群に入れられているが、左注はこの行幸の作ではないとみる。

修辞

同音の反復
「四泥(しで)」と「垂(し)でて」。

解説

四泥の埼は三重県四日市市の海岸とされる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、248頁(コマ128)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、270頁(コマ141)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日