古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1018番

白珠は 人に知らえず

作者未詳

真珠は人に知られない。知られなくてもかまわない。人が知らなくても、自分さえ知っていれば、知られなくてもかまわない。才能を認められない元興寺の僧が自らを慰めた旋頭歌。

寺の僧房で、一人の僧が掌の白い真珠を静かに見つめている

題詞十年戊寅、元興寺の僧の自ら嘆く歌一首

  1. 1白しら白しらしら珠たま珠たまたまははは白珠者
  2. 2人ひと人ひとひとににに知し知ししらららえええずずず人爾不所知
  3. 3知し知ししらららずずずともともともよしよしよし不知友縱
  4. 4知し知ししらららずずずともともとも雖不知
  5. 5吾われ吾われわれししし知し知ししれれれらららばばば吾之知有者
  6. 6知し知ししらららずずずともともともよしよしよし不知友任意

引用の仕方

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現代語訳

真珠は人に知られない。知られなくてもかまわない。人が知らなくても、私さえ知っているならば、知られなくてもかまわない。

意訳

天平10年(738)、元興寺の僧が、自分の才能が世に認められないことを嘆いて詠んだ歌である。真珠が人に知られなくてもその輝きは変わらないように、自分の値打ちは自分がわかっていればよいと、強がりつつも自らを慰めている。

語釈・文法注

文法・本文

知らずともよし
「縱」「任意」をともに「よし」と訓む。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1018番
歌体
旋頭歌(五七七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平10年(738)、元興寺の僧が、自分の才能が認められないのを嘆いて詠んだ旋頭歌。

修辞

比喩
自分を「白珠」にたとえる。
反復
「知らずともよし」をくり返す。

解説

五七七・五七七の旋頭歌で、「知らず」をくり返す歌謡的な調子が、かえって僧の悔しさを伝えている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、245頁(コマ126)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、267頁(コマ139)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日