古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1007番

言問はぬ 木すら妹と

市原王(いちはらのおおきみ)

物を言わない木でさえ、妹と兄がいるというのに、ただ一人っ子でいるのはつらい。兄弟のいない身の寂しさを歌った市原王の歌。

寄り添って立つ二本の木を、一人の若い貴人が寂しげに見上げている

題詞市原王、獨子を悲しめる歌一首

  1. 1言こと言ことこと問と問ととはははぬぬぬ不言問
  2. 2木き木ききすらすらすら妹いも妹いもいもととと木尙妹與
  3. 3兄せ兄せせありありありとととふふふををを兄有云乎
  4. 4ただただただ獨ひとり獨ひとりひとり子ご子ごごににに直獨子爾
  5. 5あるあるあるががが苦くる苦くるくるしさしさしさ有之苦者

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

物を言わない木でさえ、妹と兄があるというのに、ただ一人っ子でいることのつらさよ。

意訳

木にさえ「妹背」があると言うのに、自分にはきょうだいがいない。一人っ子の寂しさを、ありのままに歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

妹と兄
木の雌雄、または並び立つ木を「妹背」にたとえたもの。

和歌

作者
市原王(生没年未詳)
天智天皇の曾孫で、安貴王の子。大伴家持と親しかった。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1007番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
市原王が、自分が一人っ子であることを悲しんで詠んだ歌。

解説

一人っ子の悲しみという珍しい主題の歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、242頁(コマ125)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、265頁(コマ138)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日