古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1004番

思ほえず 來ましし君を

桉作益人(くらつくりのますひと)

思いがけずおいでくださったあなたを、佐保川のかじかの声も聞かせずに、帰してしまったことだ。上司をもてなしきれなかったことを惜しむ桉作益人の歌。

夕暮れの佐保川のほとりの屋敷で、主人が帰っていく客を見送っている。川面からかじかの声が聞こえ始める

題詞桉作村主益人の歌一首

  1. 1思おも思おもおもほほおえええずずず不所念
  2. 2來き來ききましましましししし君きみ君きみきみををを來座君乎
  3. 3佐保さほ佐保さほさほ川がは川がはがわののの佐保川乃
  4. 4河かは河かはかわ蝦づ蝦づず聞き聞ききかせかせかせずずず河蝦不令聞
  5. 5還かへ還かへかへしししつるつるつるかもかもかも還都流香聞

引用の仕方

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現代語訳

思いがけずおいでくださったあなたを、佐保川のかじかの声もお聞かせしないで、お帰ししてしまったことだ。

意訳

内匠寮の役人の桉作益人は、長官の佐為王を家に招いてもてなしたが、王はまだ日も傾かないうちに帰ってしまった。夕方になれば佐保川のかじかが美しく鳴くのに、それも聞かせずに帰してしまったと、名残を惜しんでいる。

語釈・文法注

文法・本文

河蝦
「かはづ」はカジカガエル。

和歌

作者
桉作益人(生没年未詳)
内匠寮の大属。巻第三の311番の作者。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1004番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
内匠寮の大属桉作益人が、長官の佐為王をもてなしたとき、王が早く帰ったのを惜しんで詠んだ歌。

解説

佐保川のかじかの声は、夕方のもてなしの風物であった。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、242頁(コマ125)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、264頁(コマ138)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日