古典ライブラリー

万葉集 巻第三 311番

梓弓 引豐國の

桉作益人(くらつくりのますひと)

豊前国の鏡山を、これから久しく見ないでいたら、恋しく思うことだろうか。豊前から都へ上る官人が、見なれた山に別れを告げた歌。

旅立つ男が、なだらかな山を何度も振り返りながら、街道を東へ向かっている

題詞桉作村主益人、豐前國より京に上る時、作れる歌一首

  1. 1梓あづさ梓あづさあずさ弓ゆみ弓ゆみゆみ梓弓
  2. 2引ひき引ひきひき豐國とよくに豐國とよくにとよくにののの引豐國之
  3. 3鏡かがみ鏡かがみかがみ山やま山やまやま鏡山
  4. 4見み見みみずずず久ひさ久ひさひさならならならばばば不見久有者
  5. 5戀こひ戀こひこいしけしけしけむむんかもかもかも戀敷牟鴨

引用の仕方

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現代語訳

(梓弓引)豊国の鏡山を、見ないで久しくなったら、恋しく思うことだろうか。

意訳

豊前国(今の福岡県東部と大分県北部)で務めを終えて都へ帰る作者は、見なれた鏡山に別れを告げる。都に戻ってしばらくすれば、この山も恋しくなるのだろうかと、任地への愛着を歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

梓弓引
弓を「引き」から、同音の「豊(とよ)」にかかる枕詞とされる。

和歌

作者
桉作益人(生没年未詳)
伝未詳。村主は姓。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・311番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
桉作益人が、豊前国から都へ上るときに詠んだ歌。

修辞

枕詞
「梓弓引」が「豊國」にかかる。

解説

鏡山は今の福岡県香春町にある山で、巻第三の417〜419番にも、この地で亡くなった河内王を葬った山として詠まれている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、101頁(コマ54)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、101頁(コマ56)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日