古典ライブラリー

万葉集 巻第六 964番

吾背子に 戀ふれば苦し

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

あなたを恋しく思うのは苦しい。暇があったら拾って行こう、恋を忘れるという忘れ貝を。都へ帰る船旅で、浜の貝を見た坂上郎女の歌。

旅の途中の浜辺で、女性がかがんで二枚貝の片方を拾い上げている

題詞同じき坂上郎女、京に向ふ海路に濱の貝を見て作れる歌一首

  1. 1吾わが吾わがわが背せ背せせ子こ子ここににに吾背子爾
  2. 2戀こ戀ここふれふれうればばば苦くる苦くるくるししし戀者苦
  3. 3暇いとま暇いとまいとまあらあらあらばばば暇有者
  4. 4拾ひり拾ひりひりひひいててて行ゆ行ゆゆかかかむむん拾而將去
  5. 5戀こひ戀こひこい忘わすれ忘わすれわすれ貝がひ貝がひがい戀忘貝

引用の仕方

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現代語訳

あなたを恋しく思うと苦しい。暇があったら拾って行こう、恋を忘れるという忘れ貝を。

意訳

都へ帰る海路で浜辺の貝を見た坂上郎女は、恋しさを忘れさせてくれるという忘れ貝を、暇があれば拾って行こうと歌う。恋の苦しさを、旅先の浜の風物に託している。

語釈・文法注

文法・本文

戀忘貝
恋を忘れさせるという貝。二枚貝の片方とされる。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・964番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女が、都へ向かう海路で浜の貝を見て詠んだ歌。

解説

忘れ貝は万葉集にたびたび詠まれ、恋や憂いを忘れさせる貝とされた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、235頁(コマ121)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、257頁(コマ134)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日