古典ライブラリー

万葉集 巻第四 725〜726番

鳰鳥の 潜く池水

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

かいつぶりの潜る池の水よ、心があるなら、私が君を恋い慕う心を示しておくれ。よそにいて恋しく思っているくらいなら、君の家の池に住む鴨になりたい。聖武天皇に献じた坂上郎女の歌二首。

宮殿の庭の池で、かいつぶりが水に潜り、鴨がのんびりと泳いでいる

題詞天皇に獻れる歌二首(大伴坂上郎女、春日の里にありて作れり)

  1. 1鳰にほ鳰にほにお鳥どり鳥どりどりののの二寶鳥乃725
  2. 2潜かづ潜かづかずくくく池いけ池いけいけ水みづ水みづみず潜池水
  3. 3こころこころこころあらあらあらばばば情有者
  4. 4君きみ君きみきみににに吾わ吾わわががが戀こ戀ここふるふるうる君爾吾戀
  5. 5情こころ情こころこころ示しめ示しめしめさささねねね情示左禰
  6. 6外よそ外よそよそににに居ゐ居ゐいててて外居而726
  7. 7戀こ戀ここひひいつつつつつつあらあらあらずずずははは戀乍不有者
  8. 8君きみ君きみきみががが家いへ家いへいえののの君之家乃
  9. 9池いけ池いけいけににに住す住すすむむむとととふふふ池爾住云
  10. 10鴨かも鴨かもかもにににあらあらあらましましましををを鴨二有益雄

引用の仕方

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現代語訳

〔725〕かいつぶりの潜る池の水よ、心があるなら、君に私が恋い慕う心を、お示ししておくれ。

〔726〕よそにいて恋しく思い続けているくらいなら、君の家の池に住むという鴨であればよかったのに。

意訳

坂上郎女は、春日の里から天皇に二首を献じた。725番は宮中の池の水に、天皇を慕う自分の心を伝えてほしいと頼み、726番は、遠くから慕うくらいなら宮中の池に住む鴨になりたいと歌う。天皇への敬慕を、恋歌の形で表している。

語釈・文法注

文法・本文

鳰鳥
「にほどり」はカイツブリ。
示さね
「ね」は願望。示しておくれ。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・725〜726番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女が、春日の里で作り、天皇(聖武天皇)に献じた歌二首。

修辞

擬人法
725番で池の水に呼びかける。

解説

原文の「二寶鳥」は「にほどり」の戯書で、二を「に」、寶を「ほ」と読む。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、176頁(コマ92)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、188頁(コマ100)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日